19世紀の香水瓶

10月に入り、いつの間にか秋の風を感じる季節となりました。
朝夕は次第に肌寒くなってきましたので、お体にはお気をつけてお過ごしください。

当館では、今年の春に開催された「香水瓶の至宝~祈りとメッセージ」展の
出品作241点のうち52点の香水瓶を常設展としてご紹介致しております。

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今回は、私の大好きな19世紀の香水瓶を紹介致します!

DSC06045 - コピーDSC06047 - コピー《香水瓶》 ブシュロン社 フランス 1890-1900年

19世紀には、クリスタル製や宝石をちりばめた香水瓶が多く作られたそうです。

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《香水瓶》 (オリーブ・エ・ミリレ) フランス 1860年頃

香水瓶の至宝の展覧会チラシの表紙を飾っていた香水瓶。

卵型のブラッドストーンに金銀細工を被せたもので、さらにその装飾の上には真珠やダイヤモンド、 ルビーなどの宝石がふんだんにあしらわれ、思わず見入ってしまう
ほどの美しさです。

DSC06052 - コピーDSC06051 - コピー《香水瓶》 フランス 1900年

葉のついた枝先にルビー、ピンク・サファイヤ、エメラルドがあしらわれ、
多色の花々を咲かせたデザインがとても素敵です。

 

いつもは受付に座っているのですが、時間を見つけては香水瓶展示室を訪れて
目の保養にしています。

お客様から「きれーい!」「初めてみたー!」という静かなつぶやきが
聞こえてきた時、とても嬉しく思うと同時に、「そうですよね!」と
心のなかで喝采している今日この頃です。

また、只今開催中の
「西南戦争浮世絵 さようなら、西郷どん」も残すところ10日となりました!
香水瓶とあわせて西南戦争浮世絵の世界もご堪能ください。

DSC06061 - コピー                                                                                                                                       

                                                                                                                                      o.s

 

第2回 香水散歩  パリ・マレ地区
 エディション・ドゥ・パルファン
フレデリック・マル社ブティック

こんにちは、クリザンテームです。前回のコニャック=ジェイ美術館訪問と同様、今回もパリ・マレ地区での散策が続きます。

なぜならこの地区には、香水専門店をはじめとする魅力的なお店がひしめきあっているからです。

なかでも、エディション・ドゥ・パルファン フレデリック・マル社のブティックは、シックな黒い外観でひときわ異彩を放つ存在です。

 

画像1(画像1)ブティック外観

 

フレデリック・マルについては、当館の企画展「香水瓶の至宝 ――祈りとメッセージ」の図録に収録されたマルティーヌ・シャザル氏の論文においても、新世代の香水アーティストとして言及されていますね。

彼が現代の香水界における革命児の一人といわれるゆえんを、私はブティックで改めて思い知らされることになりました。

まず驚くのは陳列された香水瓶がすべて同じデザインであること。しかもラベルには調香師の名前と香水名が併記されているではありませんか!

つまりここでは、調香師は決して影の存在ではないのです。あたかも本の著者名のように明記されているため、調香師名をたよりに香水を選ぶこともできるのです。

これでブランド名に冠せられた「エディション・ドゥ・パルファン」(エディションはフランス語で「出版社」)の意味にも納得させられます。

 

画像2(画像2)ジャン=クロード・エレナ作『冬の水』エディション・ドゥ・パルファン フレデリック・マル社。
エレナは、エルメス社「庭園のフレグランス」シリーズで知られる調香師。ちなみにクリザンテームは
同シリーズ『李氏の庭』がお気に入り。

 

ところでフレデリック・マルが採用したもうひとつの斬新な手法、それは新たな香りを世に出す際にはマーケティングに依存せず、調香師たちが生み出したいと願う香りを製品化することでした。

あらゆる分野においてマーケティングが主流となった今日では、実に勇気あることと言えます。

ラベル上の調香師たちの名は、そのようなマルの潔さをも表しているのですね。

 

画像3(画像3)調香師たちの肖像画がずらり。

 

シンプルを極めた香水瓶が置かれているのは、一転して個性豊かな空間です。

なんと壁も天井も鏡張りなのです。さらに有機的な形の木製キャビネットが設置されています。落ち着いた照明も相まって、SF小説で描かれる近未来へ来てしまった気がしてまいります。

 

画像4(画像4)ブティックのインテリア。

 

私はこちらで香水専用試着室を体験いたしました。                                                     「試着」とはいっても、ここで纏うのは服ではなく香水。            下の画像のようなキャビネットの中に香水を吹きかけて頂き、香りを嗅ぎます。

暗闇の中に立ち上る芳香。 一瞬にして言葉を失います。

嗅覚を研ぎ澄まして出会う香りは、かようにも雄弁であるのかと気づかされました。

 

クリザンテーム

 

 

画像5(画像5)「さあ、どうぞ」 ムッシューが香水試着室の扉を優雅に開けてくれます。照明の灯る右隣の棚は

     温度を一定に保つ香水専用のカーヴです。

 

Remerciements

本記事執筆にあたり、ご協力頂きましたエディション・ドゥ・パルファン フレデリック・マル社のデルファン氏およびエリカ・ペシャール=エルリー博士に心より御礼申し上げます。

Je tiens à exprimer mes remerciements à Delphin, Editions de Parfums Frédéric Malle et Dr. Erika Pechard-Erlih qui ont permis de réaliser cet article.

第1回 香水散歩  パリ マレ地区 
   コニャック=ジェイ美術館 

はじめまして。海の見える杜美術館の香水瓶担当の学芸員クリザンテームです。香水瓶や美術作品を求めて、日本はもとより世界中を旅しています。

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本日は、パリの中世の街並みが残るマレ地区へまいりました。まずはコニャック=ジェイ美術館を訪問いたします。というのも、こちらの美術館では、当館所蔵の香水瓶(画像1-5)と同時代にあたる18世紀美術の素晴らしいコレクションを見ることができるからです。

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1《ネセセール》イギリス、1760-1765年頃、瑪瑙、ルビー、金、象牙、ガラス、海の見える杜美術館
2《香水瓶》フランス、1720-1730年、金属に金メッキ、海の見える杜美術館
3《ネセセール》フランス、1785年頃、マザー・オブ・パール、銀、透明ガラス、金属に金メッキ、海の見える杜美術館
4《香水瓶》フランス、1785年頃、透明ガラス、金、象牙、海の見える杜美術館
5《香水瓶》フランス、1740年頃、金、海の見える杜美術館

 

パリで最も古い建物のひとつ、ドノン館に設えられた展示室には、デパート「サマリテーヌ」の創業者夫妻が蒐集したロココ様式や新古典様式の絵画や家具調度品による、18世紀の室内空間が再現されています。《ネセセール》等の香水瓶が好まれた、当時の王侯貴族の生活をより理解するには、まさにうってつけの場所といえるでしょう。

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コニャック=ジェイ美術館展示室
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展示室に足を踏み入れると、そこには曲線美を誇る寄木細工の家具や金銀細工の燭台セット、マイセンをはじめとする磁器製品といった、18世紀美術を特徴づけるものがずらりと並んでいます。キャビネットの中には、当館所蔵作品と同型の作品がいくつも見出せました。

当時は、画家でいえば「雅宴画」を得意としたヴァトーやフラゴナールらが活躍した時代ですが、コニャック=ジェイ美術館にかけられた絵画や何気ない装飾の中にも、恋愛の駆け引きの場面が生き生きと描かれていました。それらからは、18世紀には雅な情事が人々の道楽でありエチケットでもあったことがよくわかります。 私はふと、当館所蔵のセント・ボトルとボンボニエール(菓子器)が一体となった作品を思い出しました。かつてそのボンボニエールには、香り付きドロップスが入れられていたといわれています。宮廷において、愛のささやきの効果を得るためには、香水はもちろんのこと、口臭にも気を配る必要があったのですね。この美しい室内空間にいると、吐く息までも香り豊かなものでありたいと願う昔日の貴族たちの姿が身近に感じられるのです。

クリザンテーム

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《セント・ボトルとボンボニエール》イギリス、サウス・スタフォードシャー、ビルストン、1760年頃、七宝、金属に金メッキ、海の見える杜美術館

 

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ジャスミンが香る中庭で一休み。

 

杉野希妃さんがご来館くださいました☆

先日、映画監督・プロデューサー・女優の杉野希妃さんがご来館くださいました。

杉野さんは広島のご出身。女優としてキャリアをスタートされましたが、活動の幅を広げ、現在では映画のプロデュース、監督も手がけています。国境を超え、アジアを中心に世界各国の映画祭に参加、受賞も重ねているすごい人なのです。
そんな彼女が現在の展示「香水瓶の至宝~祈りとメッセージ~」展を見に来てくださいました。というのも、実は私・森下と彼女は中学・高校の6年間を共に過ごした同級生。高校を卒業してから初めての再会を果たしたのでした・・・!

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うみもりテラスで。香水瓶展の図録を持って写ってもらいました☆

 

高校卒業以来、彼女の姿を見るのは映画のスクリーンかテレビの画面か、という感じだったので、実際に会うまですごく緊張していたのですが、高校の頃とまったく変わっていなくて本当にうれしかったです。会場の香水瓶を見ながら、初めて触れるものや考え方にとてもまっすぐに好奇心を向けてくれる姿に、杉野さんの活動や作る映画のテーマの幅の広さの所以を見た気がしました。
一番最近の映画『雪女』(監督・主演:杉野希妃、2017年、和エンタテイメント)は映像美にも魅せられますが、よく知っている小泉八雲の「雪女」の物語が、異界からの越境者との交流、疎外されるマイノリティといったテーマを持って見るものに迫ってきます。彼女の映画には「一見平穏に見える日常や社会が、何かをきっかけに揺らいで、問題が見えてくる」という大変面白い物語が根底にあることが多く、カチカチな価値観にとらわれがちなこの社会に問いを投げかけてくれるのです。いや~映画って本当にいいものですね(どうしても言いたかった)。

私と彼女はまったく違う仕事をしておりますが、いろいろな時代と地域の美術に触れる中で、価値観、考え方というものはいつの世も移ろうということを私も常々感じます。いつかまたそんな話を彼女としたいものだと思ったのでした。

 

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杜の遊歩道の東屋にて。女優・杉野希妃さんの輝きをご覧くださいませ。ちなみに彼女のオーラとロケーションのおかげで、私も普段より50倍ぐらいいい顔しています。皆様も遊歩道ご散策の際にはぜひこちらでお写真などを撮ってみてください☆

森下麻衣子

香水瓶にかくれた生き物たち

6月も中旬に差し掛かり、香水瓶の至宝~祈りとメッセージ~展も

残すところあと2週間ほどになってきました。

今回は、美術館の受付・総務をつとめる私の目線から

面白いと思った香水瓶をご紹介させていただきます。

香水瓶の中には、様々な生き物たちが隠れています。

トカゲ、チョウ、テントウムシ、ヘビ、ネコ、イヌ等々・・・

こちらはセミの香水瓶。

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香水瓶 《4匹のセミ》 デザイン:ルネ・ラリック、No.475、1910年

 

 

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ロジェ・ガレ社 香水瓶《シガリア》 デザイン:ルネ・ラリック、1910年10月8日

 

似たようなふたつの香水瓶で、どちらもルネ・ラリックがデザインしたものですが、

《シガリア》は香水商であるロジェ・ガレ社が販売した香水のために、

《4匹のセミ》はルネ・ラリック社が販売するための香水瓶として制作されたそうです。

プロヴァンス地方のセミの鳴き声の素晴らしさから

容器の名称とテーマが選ばれました(展覧会図録参照)。

また他にも、愛のシンボルである、口づけをかわすハト・・・

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《双口セント・ボトル》 イギリス、セント・ジェイムズ 1755年頃

 

金属やガラスで表現されたヘビ。

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《香水瓶セット》 フランス、1850年頃

 

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香水瓶《ヘビ》 デザイン:ルネ・ラリック、No.502 1920年

 

展覧会の中で、上手にかくれんぼしている生き物たちを

探してみてはいかがでしょうか。

 

A.N

ワークショップ「オリジナル指輪付き香水瓶を作ろう」を開催しました

早いもので、もうすぐ梅雨の時期ですね。インドア派の人間としては生活にそれほど影響はないのですが、季節の移り変わりをしみじみ感じております。遊歩道はそろそろアジサイがきれいですよ。

 

5月3日、当館では、今回の香水瓶展に関連してワークショップを行いました。 「オリジナル指輪付き香水瓶を作ろう!」というものです。 この企画、大変多くのお申し込みのお電話をいただき、企画した本人も驚きました。人数の関係で、おことわりをしなければならなかったことが本当に残念です。今度、作り方などをご説明する記事をアップいたしますので、自分でもやってみよう!という方がもしいらっしゃいましたら、そちらをご参考いただければと存じます。

 

今回の展覧会は、幅広い時代と地域における香りに関わる品々を展示しております。 個人的な意見ですが、香りとその瓶のあり方について、私が見るたびに新鮮な驚きを感じるのは、17世紀の《ポマンダー》、18、19世紀の《指輪付き香水瓶》です。両者とも、なんと身につけることのできた香りの器です。

ポマンダー(pomander)はリンゴを意味する「ポム(pomme)」と竜涎香とも呼ばれる香料の名「アンバーグリス(ambergris)」の2語がつながって生まれた言葉です。これは、香りの容器であると同時に、鎖につなげて腰から提げ、身を飾るためのアクセサリーでもありました。《指輪付き香水瓶》は、その名の通り指に指輪をはめ、舞踏会などの社交の場に持っていくことができました。当時の女性はコルセットで体を締め上げていたため、失神することが多く、気付け薬用に香りのついた酢などを持ち歩いていたのです。

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《指輪付き香水瓶》 スイス 1820年

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《指輪付き香水瓶》 スイス 1820年

 

現在、おしゃれな一部の方は香水のアトマイザーを持っておでかけされるでしょうが、それを見せるためのものとして持たれている方はあまりいないのではないでしょうか。香りという今の私たちにとって身近なものであっても、時代や場所、使っていた人の立場によってその使い方は異なりますね。過去の作品と出会う楽しさはこういうところにあるのではないかなと思いますが、いかがでしょう。

もう今、こんな香水瓶は売っていない・・・というより、19世紀にだって簡単に手に入るものではなかったのです。でも、ちょっと使ってみたい、手に入れてみたいとは思いますよね。今回展示している香水瓶、ほとんどが「実際に使われていたもの」であり、「誰かが持っていたもの」です。だから、「使ってみたい!」「ほしい!」という気持ちがわきおこるのも鑑賞していて自然なことです。

・・・というわけで、私がその気持ちに素直に従った結果、このようなワークショップ企画とあいなりました。皆さん、自分でオリジナル指輪付き香水瓶、作ったらいいんですよ!

楽しく創作していただきたいし、ちょっと作品のことも知っていただければうれしいな・・・ということで、展示室で少し私の解説―香水瓶に見られる時代ごとの好み、図像にこめられた意味―などを聞いていただいて、「だったら現在の私たちが作る最高の指輪付き香水瓶ってどんなものだろう?」というのを少し考えていただきながら作っていただきましたよ。

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このような土台に自分でデコレーションしていきます。 実際に香水が入れられます。

では参加してくださった皆さんの作品のお写真です!

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個性が出ますよね。自分だったらこういうデザイン思いつかないな、という作品がいくつもありました。 時間のご都合で帰られた方の作品は撮れませんでした・・・ごめんなさい。

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この方は18世紀の香水瓶からインスピレーションを得て作ってみたとのこと。 たしかにふんだんな植物モチーフやカメオ的なモチーフが18世紀的ですね。

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この方は「ベルサイユのバラ」をイメージしました!とのことでした。 たしかに池田先生のマリーアントワネットが着ているドレスを思い出します、私。

皆さん、ご自分が見てきたもの、好きなものの記憶を活かして素敵な作品を作ってくださいました。限られた時間と材料でのワークショップでしたが、皆さんとても生き生きと制作してくださって、大変うれしかったです。 瓶に香水を入れて、指にそっとはめてみてくださいね。

今後も皆さんと美術との関わりが少しでも豊かなものになるような企画を考えて生きたいと思います。精進していきますので、もしまたこのような機会がありましたらぜひ当館へ足をお運びいただければと思っております。 それではまた!

 

森下麻衣子

香水瓶の至宝 44 《香水瓶とボンボニエール》 イギリス サウス・スタフォードシャー 1770年頃

リニューアルオープン記念特別展「香水瓶の至宝 ~祈りとメッセージ~」開催中

海の見える杜美術館の香水瓶コレクションから、選りすぐりの名品を展観いたします。香りと人類の歩んできた重厚かつきらびやかな歴史をご覧ください。

この香水瓶の、高さは10.5cm。素材はエナメル彩、金属に金メッキです。

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うみひこ

香水瓶の至宝展38 《香水瓶》イギリス ダービー 1760-1765年

リニューアルオープン記念特別展「香水瓶の至宝 ~祈りとメッセージ~」開催中

海の見える杜美術館の香水瓶コレクションから、選りすぐりの名品を展観いたします。香りと人類の歩んできた重厚かつきらびやかな歴史をご覧ください。

この香水瓶の、高さは10.5cm。素材は軟質磁器です。

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うみひこ

香水瓶の至宝展53 《香水瓶》 イギリス セント・ジェイムズ 1760年頃

リニューアルオープン記念特別展「香水瓶の至宝 ~祈りとメッセージ~」開催中

海の見える杜美術館の香水瓶コレクションから、選りすぐりの名品を展観いたします。香りと人類の歩んできた重厚かつきらびやかな歴史をご覧ください。

この香水瓶の、高さは7.6cm。素材は軟質磁器、金属に金メッキです。

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うみひこ