「芸術家たちのセンチメンタル・ジャーニー」展のご案内

まだ夏の暑さが残りますが、空の色や日差しには少しずつ秋の気配が感じられるようになってきました。

秋といえば芸術鑑賞、そして、旅にも良い季節ですね。現在海の見える杜美術館では、そんな季節にぜひご覧いただきたい「芸術家たちのセンチメンタル・ジャーニー」展を開催中です。

エントランスの様子

旅は古来芸術家たちにもインスピレーションを与えてきました。日本の芸術家たちも、様々な土地を旅しては、その経験を自身の表現に活かしています。今回の展覧会では、旅する芸術家たちの足跡を、当館が所蔵する日本絵画コレクションでたどってみました。平安時代の日本を歌とともに旅した西行法師から、発達した交通手段を利用して海外まででかけていった竹内栖鳳ら近代の画家たちまで、多彩な旅にまつわる絵画作品をお楽しみいただけます。

小さなブックレット(税込み550円)も絶賛発売中です。

チラシとブックレットです

展覧会は10月22日(日)までです。遊歩道の植物も徐々に秋の気配です。ぜひ展覧会とあわせてお楽しみください。

記念講演会「描かれた平家物語」のご案内 「平家物語絵—修羅と鎮魂の絵画−」展

5月4日(水・祝)、現在開催中の「平家物語絵—修羅と鎮魂の絵画−」展の記念講演会が行われます。会場は美術館ではなく、ウッドワンさくらぴあ小ホール(広電宮島線「廿日市市役所前(平良)」駅から徒歩7分ほど)で行われます。

まだ展示をご覧になっていない方も、すでに展覧会にお越し頂いた方も、より深く、楽しく平家絵を知ることができる講演会にしたいと思っています。ぜひお越しください。

聴講は無料ですが、申し込みが必要になります。下記の内容をご確認ください。

  • 日時:5月4日(水・祝) 13:30〜[開場13:00]
  • 会場:はつかいち文化ホール ウッドワンさくらぴあ小ホール(広島県廿日市市下平良1-11-1)
  • 講演者:相澤正彦(成城大学教授)、山本聡美(早稲田大学教授)、谷川ゆき(海の見える杜美術館学芸主任)
  • 参加費:無料
  • 申し込み方法:「平家展講演会参加希望」とご記入の上、①参加人数、②参加希望者全員の氏名、③代表者の住所、④代表者の電話番号を明記し、往復はがき(1通2名様まで)で、4月28日(木)までにお申し込みください。返信はがきの宛先に代表者の住所氏名をご記入ください。当館より折り返しご連絡いたします。なお、定員に達ししだい締切とさせていただきます。
  • はがき宛先:〒739-0481 広島県廿日市市大野亀ヶ岡10701 海の見える杜美術館 平家展講演会係宛
  • 問い合わせ先:海の見える杜美術館 0829-56-3221

展覧会も会期後半に入りました。お堂の障壁画であった当時の様子を再現した、赤間神宮ご所蔵の「安徳天皇縁起絵伝」の展示もご好評をいただいています。

安徳天皇縁起絵伝 全8幅 赤間神宮

谷川ゆき

平家物語絵展が日曜美術館アートシーンで紹介されます

3月27日放送のNHK Eテレ「日曜美術館アートシーン」で、「平家物語絵展」が紹介されることになりました。放送時間などの情報は番組のホームページでご確認ください。

エントランスホールの様子

桜のつぼみが少しずつ開いてきました。ご来館お待ちしております。

小松均の風景画2点 「小松均 自然を愛した画仙のまなざし」展

小松均(1902〜1989)は、山形に生まれ、後に京都に出て土田麦僊の門下生となって活躍した日本画家です。京都・大原で自給自足の生活をしながら作画活動を続け、世俗とは無縁の暮らしぶりを続けたことから、「大原の画仙」とも呼ばれます。その生誕120年を記念して、当館が所蔵する小松作品をご紹介する展覧会「小松均 自然を愛した画仙のまなざし」を開催しています。

早いもので小松均展、開館から2週間が経ちました。今回のブログでは展覧会のみどころのひとつ、昭和10年代に制作された2つの風景画の大作をご紹介します。

小松の代表作といえば、昭和40年代、60歳代以降にてがけた故郷の最上川や、終生の住まいとして愛した大原の景色、雄大な富士山の景観を描いた大作の風景画が良く知られます。いずれも時に土俗的と表現される力強い独特の墨線を執拗に重ねて、自然の真の姿を写し取ろうとしたものです。当館の所蔵する小松の風景画2点は、その独自の風景画にいたる以前、昭和15年(1940)、38歳の時に伊豆下田の風景を描いたもの。この時期小松は南画家たちとの交流の中で墨を用いた風景画への傾倒を示し始めており、いわば小松の画業の転換期に制作された貴重な作例です。

昭和14年秋、最初の絵の師・岡村葵園が亡くなります。その東京での葬儀の帰途でしょうか、小松は伊豆下田をスケッチ旅行して廻り、その雄大な風景に魅せられます。何度か訪ねて作画し、乾坤社第2回展に「伊豆二題」として出品したのがこの2点です。

小松均《石廊崎画巻》

《石廊崎》伊豆半島の南端、太平洋を一望する石廊崎岬の景色を描く作品。紅葉を豊かな彩色で描き出した画巻の末尾には、石廊埼灯台の姿も。

1989-034小松均《伊豆岩山図》

《伊豆岩山風景》墨一色で、岩山に漂う湿潤な空気を描き出す。視界を白く霞ませる激しい雨が上がり、黒々とした岩山がその姿を現す様が見事です。

どちらも縦65センチ、長さは8 メートルを越える圧巻の画面。色をつかって雄大な広がりを見せる伊豆の海と岬を描いた《石廊崎》と、対して墨一色で湿潤な空気の中に聳える岩山を描いた《伊豆岩山風景》。伊豆の自然が持つ異なった表情の描き分けが見事です。

今回は両作とも大きく開いて、ほぼ全画面ご覧頂けるよう展示しました。写真は《伊豆岩山風景》です。

1階のエントランスには《石廊崎》を壁面に拡大してあります。

冒頭の虹が美しいです。

1階ギャラリー 虹

 

ところで両作とも、画中には山道を行く人の姿が小さく描き込まれています。

伊豆岩山 人

この人はどこを歩いているのでしょう?ぜひ会場で探してみてください。

 

谷川ゆき

「歌仙をえがく—歌・神・人の物語—」展 浮世絵と歌仙

「歌仙をえがく」展も会期を残すところ1週間ほどとなりました。

王朝の雅を伝える存在として和歌とともにしばしば絵に描かれてきた歌仙たち。その存在は、江戸時代も中期以降になると、絵入り版本の流通とともに庶民の教養としても浸透していきます。また歌仙や彼らの詠んだ和歌は浮世絵の主題ともなり、しばしば「見立て」の手法で、当世の美人や役者にそのイメージが投影されていきます。

今回の展覧会では、三代歌川豊国(国貞)による《見立三十六歌撰之内》を36枚まとめてご覧いただけます。展覧会後半の見所です。
この作品は、役者見立絵です。歌仙の名とその和歌が色紙形の中に書かれ、劇中の登場人物の名が役者の似顔絵に添えられます。登場人物と、歌意や歌のモチーフ、あるいはそれを詠んだ歌仙の境遇などの間に連想されることを読み解き、描かれている人物が登場するのはどの演目か、さらに、似顔からどの役者であるのかを当てることが、この作品を見る際の楽しみ方だったようです。

凡河内躬恒

歌川国貞(三代豊国)《見立三十六歌撰之内》「凡河内躬恒」嘉永5年(1852) 海の見える杜美術館

謎解きはなかなか難しく、よほどの歌舞伎通で、かつ和歌や歌仙に明るくなければできなさそう。会場には柿本人麻呂などほんの数人分ですが、謎解きの解説のパネルをつけました。江戸の芝居愛好者の教養をぜひ追体験してみてください。浮世絵自体も力強く、見応えがあります。

 

YouTubeに画像をゆっくりご覧頂ける動画にしてアップしました。ぜひお楽しみください。

https://www.youtube.com/channel/UCyOWfAm66u_WefHCAvhlPkA

 

谷川ゆき

作品紹介 《厳島八景画巻》より「大元桜花」

お花見のシーズンは過ぎましたが、前回の小野小町の衣の文様に続き、しつこく桜の話をさせてください。今回は、昨年開催した「厳島に遊ぶ—描かれた魅惑の聖地」展(11月23日〜12月29日)で展示した《厳島八景画巻》から、宮島の大元神社に咲く桜を描いた「大元桜花」の場面をご紹介します。

 

厳島の景観の見所ベスト8を選んだ「厳島八景」をご存知でしょうか。正徳4年(1717)、厳島の光明院の僧、恕信の依頼によって、京都の公家、冷泉為綱が八景を選定します。中国の景勝地、瀟湘八景に倣って選ばれた厳島の名勝は、「厳島明燈」「大元桜花」「瀧宮水蛍」「鑑池秋月」「谷原麋鹿」「御笠濱鋪雪」「有浦客船」「弥山神鴉」の8つ。それぞれに和歌、漢詩などの詩歌と挿絵を添えて、元文4年(1739)に版本『厳島八景』(全3冊)が刊行されています。

『厳島八景』 3冊のうち上、題字と題目 海の見える杜美術館蔵

『厳島八景』 3冊のうち上、題字と題目 海の見える杜美術館蔵

さて、この「厳島八景」の成立に関わった公家のひとりに、風早公長がいます。公長は冷泉為綱に八景の題の選定を依頼し、また、版本『厳島八景』(上冊)に、「有浦客船」の和歌、「八景和歌跋」、「八景詩跋」を寄せています。

ここでご紹介する《厳島八景画巻》は、この風早家ゆかりの作例です。版本上冊にある八景の和歌と挿絵、「八景和歌跋」から成り、その後に風早公長の孫、公雄の明和5年(1768)の署名、また、それに続いて明和7年に画工に写させた旨の奥書があります。おそらく公雄による明和5年の原本を、誰かが明和7年に写させたのだと思うのですが、残念ながらそれが誰なのかは分かりません。詳細は不明ながら、江戸時代の宮島と京都の公家文化の交流の一端を示す興味深い資料です。

《厳島八景画巻》 全1巻 奥書 海の見える杜美術館蔵

《厳島八景画巻》 全1巻 奥書 海の見える杜美術館蔵

さて、前置きが長くなりましたが、あとはのんびり「大元桜花」の場面で一足遅いお花見を...。

《厳島八景画巻》 全1巻 「大元桜花」 海の見える杜美術館蔵

《厳島八景画巻》 全1巻 「大元桜花」 海の見える杜美術館蔵

穏やかな海浜に面して鳥居があり、少し奥まって社が描かれます。春霞のかかる山容を背景に、木々と桜の花に囲まれてたたずむ大元神社の静謐な趣は、嚴島神社の壮麗な社殿とはまた違った感動を誘います。現在も大元神社を訪れると、このひっそりとした聖域の空気が、当時と変わらず漂っているように感じられます。

《厳島八景画巻》 「大元桜花」部分

《厳島八景画巻》 「大元桜花」部分

《厳島八景図巻》はページ数の都合で展覧会ブックレットに掲載できなかったこともあり、何かの機会にご紹介したいと思っていました。「厳島に遊ぶ」展は寒さが深まる中で展示の準備をしていたので、春はことさら待ち遠しく、桜の季節がきたら「大元桜花」をぜひ訪れてみたいと思っていたのです。しかし、残念ながら今年は新型コロナウイルスの影響で叶いませんでした。そんな今年の桜への未練も含めて、この機に一部をご覧頂きました。

来年は穏やかな春が訪れるよう願うばかりです。

 

谷川ゆき

 

「厳島に遊ぶ」展 会期最後の週末です!

2019年もあと数日ですね。そして「厳島に遊ぶ」展もあと2日を残すのみとなりました。

 

展覧会の第2章では、印刷物に描かれた厳島を紹介しています。江戸時代は庶民が旅を楽しめるようになった時代。旅行ブームの中で全国各地の名所を紹介する名所記や図会が刊行されます。これらはいわば現代のガイドブックです。

厳島に特化した名所図会の決定版と言えるのが、『芸州厳島図会』(5巻全10冊)。15年もの年月をかけて天保13(1842)年に完成しました。豊富かつ多様な挿絵が魅力で、往時の厳島の様子を現代の我々に生き生きと伝えてくれます。

大鳥居の図

岡田清編、山野峻峯斎画 『芸州厳島図会』より、大鳥居の図

内容も多岐にわたり、嚴島神社をはじめとする名所の紹介にとどまらず、島に暮らす人々の様子や、四季折々の行事、嚴島神社に伝来する宝物などについて詳細な図とともに記されています。

さて、ここではこの『厳島図会』のひとつの図と、歌川広重の浮世絵の関わりをご紹介します。

歌川広重 《六十余州名所図会 芸州 厳島祭礼之図》

上にあげた作品は、歌川広重の六十余州名所図会のうち、「安芸 厳島祭礼之図」。嚴島神社の重要な祭礼のひとつ、管絃祭のクライマックス—夜半に船が地御前より還幸し、まさに大鳥居にさしかかろうとする華やかな場面—を描いたものです。厳島の管絃祭はよく知られていたようで、全国の地誌などに挿絵つきで取り上げられています。

さて、広重は旅をよくした浮世絵師として知られます。ですのでこの一枚も広重が実際に宮島に来て管絃祭を見物した風景を描いたものと思いたいのですが、残念ながら必ずしもそうではなさそうです。この広重の一枚と、『芸州厳島図会』の一図を比べてみると・・・。広重の管絃祭の船の姿は、『厳島図会』のそれをほぼコピーしたものであることがわかります。展覧会会場ではこのふたつを並べて展示してあります。ぜひ比べてみてください。

管絃祭の船が還幸する様子

管絃祭の船が還幸する様子

それにしてもさすがは広重。『厳島図会』のオリジナルの船と大鳥居を大胆にトリミングして、夜の空と海を背景に際立たせた構図が見事です。

 

前回のブログでご紹介したような屏風の大画面の迫力と、今回ご紹介した、小さいけれどたくさんの情報と当時の人々の厳島への想いが詰まった版本たち。いずれも魅力的です。どうぞお見逃しなく!

 

谷川ゆき

「厳島に遊ぶ」展(〜12月29日)のみどころ 名所風俗図屏風

あっという間に会期を残すところ1週間ほどとなってしまいました。

今回の展覧会の見所は、なんといっても大画面に厳島を描いた屏風です。全部で9点。そのうち江戸時代に描かれた厳島の名所風俗図屏風6点が展覧会最初の見所になっています。

古くから信仰を集めた厳島ですが、意外なことに国宝の《一遍聖絵》など一部の例をのぞき、厳島や嚴島神社を描いた中世に遡る作例はそう多くありません。盛んに描かれるようになったのは江戸時代初期のこと。しかし、ひとたび描かれるようになると、厳島は名所風俗図屏風として人気の画題となります。

名所風俗図屏風とは、京都以外の、吉野や天橋立、和歌浦などの地方名所を組合せ、有名な寺社などを中心とした名所の景観と、そこに遊ぶ人々の様子を描いた絵画のことで、江戸時代初期に流行しました。名所風俗図屏風の中でも厳島を描いた作例は群を抜いて多く、現在では60点以上が知られています。

その中でも最も古い時期に制作されたもののひとつ、と考えられるのが、展覧会の最初に展示してある《吉野厳島図屏風》です。

《吉野厳島図屏風》 6曲1双 のうち、左隻の厳島図 江戸時代・17世紀 海の見える杜美術館

《吉野厳島図屏風》 6曲1双 のうち、左隻の厳島図 江戸時代・17世紀 海の見える杜美術館

この吉野と厳島の組合せからは、厳島が屏風に描かれる様になったきっかけは豊臣秀吉の周辺にあったことが推理できるのですが、そのあたりの詳しい説明はぜひ展示会場の解説パネルで!

大きな画面に、嚴島神社の社殿を中心に描かれた厳島はたいへん迫力があります。金雲と濃彩の絵の具の色があいまって、華やかで非日常的な聖地の様子が表されています。弥山や嚴島神社がどのように描かれているか観察したり、今は失われてしまったお堂の姿を探したり、楽しみ方は色々です。宮島をよくご存知の方は、描かれた場所が現在のどの場所に相当するのか考えるのも楽しいはずです。私がお勧めしたいのは、厳島を往来する人々の楽しそうな様子をひとりひとり観察すること。特に《吉野厳島図屏風》は、近世初期風俗画のある種享楽的な雰囲気を残し、人々の華やかな衣や髪形、喧嘩したり宴に興じたりする活力ある描写に見応えがあります。

《吉野厳島図屏風》部分 嚴島神社の舞台では毛氈をひいて宴会をする寛いだ男達の姿が。社殿の横では海水浴に興じる人々も・・・。

《吉野厳島図屏風》部分 嚴島神社の舞台では毛氈をひいて宴会をする寛いだ男達の姿が。社殿の横では海水浴に興じる人々も・・・。

ぜひ細部までじっくりご覧頂きたい!ということで、受付で単眼鏡の貸出を行っています。ぜひご活用ください。

また、展示室には部分を拡大したパネルをご用意しました。リンク先にあげたのはその一枚。《吉野厳島図屏風》の厳島図のうち、東町の商店の賑わいを描いた部分を拡大しました。床屋や足袋屋、扇屋や反物屋など、店主とお客との活気あふれるやりとりが魅力的に描かれています。

海杜テラスから見る宮島は今日も見事な姿です。展覧会の前後に宮島を訪れて、江戸と現代の違いを探って頂くのも楽しいと思います。

 

谷川ゆき

 

「厳島に遊ぶ—描かれた魅惑の聖地—」展はじまりました!

「厳島に遊ぶ」展がいよいよ11月23日から始まりました。今回の展覧会は、

第1章 海上の理想郷—名所風俗図屏風に描かれた厳島

第2章 厳島に行こう—旅とメディア

第3章 厳島を記憶する—真景図にこめられた意図

の三部構成で、屏風、浮世絵、版本、掛け軸など、江戸時代に描かれた多様な厳島の姿をご覧いただきます。

 

1階には、作品番号6《厳島図屏風》の厳島神社社殿を大きく拡大して壁面に。屏風の中で厳島神社を参拝する人々は本当に楽しそうで朗らかです。記念撮影もぜひ!IMG_1953

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展覧会会場で描かれた厳島を見た後は、海杜テラスから今の厳島の姿を眺めてみてください。写真は23日夕方の海杜テラスから見た厳島です。秋の青く晴れた空に映える美しい姿をスマホで撮影できました。

会期は12月29日までと1ヶ月ちょっとです。ぜひお早めに!

 

また、11月30日(土)には、県立広島大学 宮島学センターの大知徳子先生を講師に、「絵図から見る江戸時代の厳島参詣」と題して公開レクチャーが行われます。まだ少しお席に余裕があります。どうぞお問い合わせください。

【イベント情報】

■公開レクチャー「絵図から見る江戸時代の厳島参詣」*要事前申し込み

[講 師] 大知徳子氏(県立広島大学 地域基盤研究機構 地域基盤研究センター 宮島学センター 特命講師)

[日 時] 11月30日(土)13:30〜15:00

[会 場] 海の見える杜美術館

[定 員] 30名(先着順、要事前申込)

[参加費] 無料(ただし、入館料が必要です)

[申し込み方法] お電話かメールでお申し込みください。その際、参加者のお名前とお電話番号をお知らせください。なお、定員に達し次第締め切りとさせていただきます。

Tel:0829-56-3221 メールアドレス: info@www.umam.jp (件名に「厳島に遊ぶ展レクチャー参加希望」とご記入ください)

 

谷川ゆき

 

「幸若舞曲と絵画」展、展示替えをします

早いもので気がつけば4月。杜の遊歩道の桜も満開を迎えようとしています。

さて、展覧会「幸若舞曲と絵画」も会期半ば。8日の休館日に展示替えをいたします。

 

出品される作品は変わりませんが、絵本のページをめくり、絵巻を巻き替え、前半とは違う場面をお見せします。前半はこの土日が最期です。

 

今回の展覧会の見所のひとつである、海の見える杜美術館所蔵の《舞の本絵本》は、幸若舞曲の人気の演目三十六番を47冊の絵本のセットに仕立てた作品です。詞書(文字の部分)には華やかな装飾が施され、絵のページにも上下に金箔の霞が配され、高価な顔料が惜しむことなく使われていて、大変豪華な作り。一見して格の高い大名家など、限られた層の人々の持ち物であったと想像されます。実際に、各冊には「游焉館図書」の印が捺され、この本が游焉館、つまり府内藩の江戸末期の藩校の所蔵であったことが知られ、豊後松平家(大給家)の持ち物であったものが府内藩藩校に移管されたと想定されるのです。

 

海杜本《舞の本絵本》の他にも、アイルランドのチェスター・ビーティ・ライブラリィ等が所蔵する《舞の本絵巻》や、日本大学図書館が所蔵する《幸若舞曲集》(本展覧会で展示中です)など、同じ『舞の本』をもとにした絵巻のセットが作られていたことが知られています。

 

海杜本は(多少異同がありますが)三十六番が揃った希有な作例で、今回の展覧会では、その三十六番47冊を一挙公開しています。

 

とはいえ絵本ですので、すべてのページを一度にお目にかけることができずに残念なのです。三十六番、それぞれのお話の名場面を少しでも見て頂きたい!というわけで、今回は作品の保護もかねて、会期の半ばでページを替えて、違う場面をお見せします。

 

たとえば、兄頼朝に追われた源義経とその郎党の最期を語る「高館」。現在は、義経らが涙ながらに酌み交わす最期の酒宴の場面を展示しています。義経の酒宴そして後半は、大奮闘の後、立ったまま死を遂げる弁慶の立ち往生の場面を展示します。弁慶の立ち往生

 

義経や常盤御前、敦盛や曽我兄弟など、戦国武将に愛された英雄たちの名場面をどうぞお見逃しなく!

 

谷川ゆき