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賑わい・語り・戯れる―海杜コレクションで見る集いの美術―

【趣 旨】

この2年ほどの間続いているコロナ禍は、世界中の人々にある種の孤独に耐えることを強要しました。多くの人々が年末年始の家族の集まりも、友人同士の気楽な会食も、大きな会場でのイベントも、いくつもの機会を諦めて過ごしてきたのではないでしょうか。その経験は、人々と集い、ともに過ごす時間の喜びがいかにかけがえのないものであるかを、改めて私達に実感させました。絵画の世界を覗いてみると、古今人々は様々な集いを楽しんでいます。仲間と宴会で盛り上がり、お祭りなどのイベントに行列をなし、あるいは季節ごとの行事に参加するなど・・・。日常的なささやかで親しい会合から、群衆で賑わう公の行事まで、人々が日々の暮らしの中で楽しげに集う様子とその感懐を、海の見える杜美術館の日本美術コレクションをとおしてお楽しみいただきます。 

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【基本情報】

[会期]2022年9月10日(土)〜2022年10月16日(日)
[開館時間]10:00〜17:00(入館は16:30まで)
[休館日]月曜日[ただし9/19(祝)、10/10(祝)は開館]、9/20(火)、10/11(火)
[入館料]一般1,000円 高・大学生500円 中学生以下無料
*障がい者手帳などをお持ちの方は半額。介添えの方は1名無料。*20名以上の団体は各200円引き。
[タクシー来館特典]タクシーでご来館の方、タクシー1台につき1名入館無料
*当館ご入場の際に当日のタクシー領収書を受付にご提示ください。
[主催]海の見える杜美術館
[後援]広島県教育委員会、廿日市市教育委員会


【イベント情報】

当館学芸員によるギャラリトーク

日 時=9月24日(土)、10月8日(土)、各13:30〜(45分程度)
会 場=海の見える杜美術館 展示室
参加費=無料(ただし、入館料が必要です)
事前申し込み=不要


【章立て・主な出品作品】

第1章 ハレの日を祝う―参詣・祭・行列―

多くの人で賑わう祭りや、有名な寺社仏閣への参詣などの非日常的な活動が、わたしたちの人生のガス抜きのような役割をはたしてくれることは、昔から変わりません。有名な貴人の往来もまた、庶民にとっては華やかで物々しい行列を見物できる格好のハレの行事です。ここでは那智や厳島、住吉などの風光明媚な聖地に出かける人々、後水尾(ごみずのお)天皇の二条城への行幸(ぎょうこう)を描いた《二条城行幸図》や、人々で賑わう京都とその近郊の名所を描いた《洛中洛外図》など、都鄙(とひ)でハレの行事を満喫する人々の様子をご覧いただきます。

《那智参詣曼荼羅》 二曲一隻 江戸時代 海の見える杜美術館
《二条城行幸図屏風》 八曲一双 江戸時代 海の見える杜美術館

第2章 日常の風景―友人たち・おしゃべり・学びの場―

コロナ禍にあった私達が実現できなかったのは、大勢が集うイベントや、飲食をともなう会合に参加することだけではありませんでした。声を出す学びの場や、気のおけない家族や友人たちとの会話など、少人数であっても親しい交わりは、はばかられたり、あるいはマスクやソーシャルディスタンスを気にしながらのものでした。ここでは、こぢんまりとした、それでいて親密な距離感で交わされるおしゃべりや、学びの場での先生と学生たちの様子など、日常の中にある人々の交わりをご覧頂きます。

喜多川歌麿《三美人図》 1幅 江戸時代・寛政年間(1789-1801) 海の見える杜美術館
秦テルヲ《遊戯》 1幅 明治45年(1912) 海の見える杜美術館

第3章 宴と遊びの愉楽

《村松物語絵巻》 (No.20)に描かれるような舞台の見物や、《たけがり》(No.26)に見る紅葉狩りなどの季節の遊びなどは、ひとりきりで出かけるより、気心の知れた仲間たち、または大勢の人々とともにすることで、その楽しさを増すことがあります。また、「ひとつ釜の飯を食う」という言葉があるように、飲食をともにすることで古来人間は紐帯(ちゅうたい)を強めてきました。冠婚葬祭などのあらたまった場や、季節ごとの行事、または仕事帰りの一杯など、私たちがなにかと理由をつけて席を設けるのは、美味しいお料理とお酒だけでなく、ともに過ごす時間の喜びを味わうためなのでしょう。

《村松物語絵巻》 全12軸のうち、巻三・四 江戸時代 海の見える杜美術館

木島櫻谷《たけがり》 二曲一双 大正13年(1924) 海の見える杜美術館

エピローグ 集いの余韻

さて、楽しい集いの時間にもやがて終わりがやってきます。しかし絵はときに、ともに過ごした時間の喜びや、交流の余韻をもとどめてくれます。そのような絵のひとつの形が、複数の人々がひとつの画面に字や絵を寄せる「寄書」です。ここでは江戸絵画の巨匠ふたりがおそらくはプライベートな酒席で興に乗って描いた《猫杓子図》(No.28)から、明治時代の京都で竹内栖鳳らが同じ「虫」の画題で絵を競い合った《虫図》(No.32)など、画家たちの様々な集いや交流の証といえる絵画をご紹介します。また、最後にご覧いただく《煎茶図録》(No.34)や《煎茶筵帖》(No.35)は、煎茶会の(しつら)えを記録にとどめたもの。参加した人々は描かず、お道具の設えのみを描く絵画は不思議な静けさをたたえ、むしろその集いの余韻を私達に強く伝えるようです。

与謝蕪村・円山応挙合作《猫杓子図》1幅 江戸時代 海の見える杜美術館
幸野楳嶺《煎茶筵帖》1帖 明治9年(1876) 海の見える杜美術館