はやいもので、9月に開幕した「綺羅ほしの如く―星野画廊が発掘した近代日本美術史―」の会期も、早いものであと一週間となりました。
現在の第Ⅱ部は、当館の星野コレクションの中から人物画を展示しております。美しい女性の姿を描いた、いわゆる美人画と言われるジャンルの作品、男性の身体の美しさを表した作品、可愛らしい子供の姿、労働する人物像など、多様な人物像をご覧いただけます。

東京で活躍した早世の画家・増原宗一、大阪画壇の女性の画家である島成園、木谷千種、星加雪乃ら、今では知る人ぞ知る存在ではありますが、おそらくご来館のほとんどのお客様にとって知らない画家ばかりではないかと思います。しかし、作品のどれを見ても、画題の選択や顔や姿の描き方に画家の個性が表れていて、知らない画家の作品であることはまったく気にならず楽しめると考えております。
今回、第Ⅱ期の「顔」として選んだ作品は森守明の《椅子によれる子供》です。こちらの作品は、第2章「労働と家庭―近代社会の肖像―」の入り口から真正面に見えるように展示しています。

遠くからでも分かる、何か目を引き付ける魅力があります。

森守明《椅子によれる子供》1925年
描かれているのは、星野氏によると画家森守明の息子の公豊とのこと。大事そうなバスケットを抱え、籐の椅子にすっぽりとおさまるようにお行儀よく座っています。印象的な瞳、子供らしい丸い頬や手の表現を是非お近くでご覧いただければと思っております。
この、椅子に座る人物像の背景に外の風景を合わせるという点において、レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》によく似ていると思っているのですが、皆さまどう思われますでしょうか。ちょうど同じ頃、土田麦僊が同じく座像と風景を合わせた《舞妓林泉》(1924年、東京国立近代美術館蔵)を第四回国画創作協会展で発表しています。自分の大切な息子を描く際に画家が何を思って筆をとったか、つい思いを馳せてしまいます。

やはりうまく撮れませんでしたが、展覧会には第Ⅰ部・第Ⅱ部の作品全点を載せております。
ご興味持っていただければ幸いです。
森下麻衣子