菅井汲展も残り1日です。

海の見える杜美術館では、7月21日(日)まで「生誕100年記念 菅井汲 —あくなき挑戦者—」展を開催しています。

 本展覧会は、パリを拠点に活動した日本人画家・菅井汲の版画作品にスポットをあて、同館所蔵のコレクション約100点を展示するものです。

菅井汲については当館のホームページの展覧会紹介ページをご覧ください。
http://www.umam.jp/exhibition20190525.html

菅井汲展の以前の紹介記事については以下をご覧ください。
http://www.umam.jp/blog/?p=9422

 菅井汲は—渡仏初期の日本的主題を取り入れた繊細なタッチの作品、1960年代の明快な色彩で幾何学的な形を描いたダイナミックな抽象作品、1970年代のほぼ円と直線のみで構成される規格化されたモチーフを主体にした作品、晩年の「S」字シリーズ−と作風を幾度も変えたことで知られています。

 その中でも、私が個人的に好きなのは1970年代の作品です。

菅井汲 group3 UMAM 海の見える杜美術館
菅井汲《GROUP 3》1980年 シルクスクリーン
 菅井の作風は1960年頃からがらりと変わり、幾何学的なフォルムの色鮮やかな作品を手がけるようになります。さらに1970年代になると色の数が限定され色彩がより鮮やかになり、フォルムに制限が加えられた図形的なモチーフで構成された作品を展開していきます。彼はコンパスや定規を使って正確に線や円を引き、モチーフの制作を行っていました。また、彼はより鮮やかな色あいを出すために、それまで主流としていたリトグラフからシルクスクリーンへと制作の技法を変えるなど工夫も試みました。
この時期の作品は、一見単純にも思われますが、道路標識を彷彿とさせるようなモチーフと色彩の鮮やかさは強く印象に残ります。菅井はこの時期のインタビュー記事で「屋外において、50メートル先から見てもパッとわかる作品を考えている」と答えていますが、彼が目指していたまさしくこのような作品だったのでしょう。

菅井汲展も残り1日となりました。菅井汲作品の魅力は、実際に目で見ないとわからないと思います。ぜひお楽しみいただければと思います。

大内直輝

ツバメのヒナ part2

皆様こんにちは。

前回の記事でご紹介しましたツバメのヒナは、あっという間に育ち、

今にも飛び立ちそうなほどに成長していました。
(前回の記事「ツバメのヒナ」はこちら)

20190709 ツバメ120190710 ツバメほんの一週間前とは見違えるほど、顔も色も大きさも変わり、

巣の中では場所の取り合いをしているようでした。

20190709 ツバメ3

現在開催中の菅井汲展が閉幕する頃には旅立ちそうです。

この子たちが巣立っても、今度は次回展「美術の森でバードウォッチング」で

たくさんの鳥を描いた作品が展示されます。

その中にはツバメの作品もあるとか。

楽しみにお待ちください。

A.N

菅井汲の版画

海の見える森美術館では、7月21日(日)まで「生誕100年記念 菅井汲 —あくなき挑戦者—」展を開催しています。

 本展覧会は、パリを拠点に活動した日本人画家・菅井汲の版画作品にスポットをあて、同館所蔵のコレクション約100点を展示するものです。今回は、それらを4つの時期—渡仏初期の日本的主題を取り入れた繊細なタッチの作品、1960年代の明快な色彩で幾何学的な形を描いたダイナミックな抽象作品、1970年代のほぼ円と直線のみで構成される規格化されたモチーフを主体にした作品、晩年の「S」字シリーズ−に分けて章を構成しています。

菅井汲については当館のホームページの展覧会紹介ページをご覧ください。
http://www.umam.jp/exhibition20190525.html

今回は菅井汲と版画のことについて紹介したいと思います。

 菅井汲は1952年の渡仏から1996年に亡くなるまで、大型の油彩やアクリル画に制作の主体を置いていましたが、その一方で数多くの版画作品を手がけていました。その数は400点以上に及び、版画は彼の画業を語る上で無視できないものとなっています。

 彼と版画の出会いは1955年のことで、当時契約していたクラヴァン画廊の勧めで《DIABLE ROUGE(赤い鬼)》という作品のリトグラフを制作したのが最初といわれています。その背景には、前年(1954年)に同画廊で開かれた個展が大きな反響を呼び、彼が忽ち売れっ子の画家となったことで、彼の作品に対する需要が高まり、供給が追いつかなくなったことがあったようです。

UMAM赤い鬼 海の見える杜美術館 
《DIABLE ROUGE(赤い鬼)》 1955年 リトグラフ

 そのようなきっかけで始めた版画ですが、結果的に彼は亡くなるまでの40年以上にわたりその制作に携わることとなりました。菅井は版画について「版画の魅力はスピード感である」と語っており、タブロー(絵画)や立体作品と違って気軽に制作に取りかかれ、自分の自由で無責任な思いつきを比較的短時間で実現できるものとして、版画の制作に力を注いでいました。彼は版画の個展を頻繁に行い、国際版画展にも何度も出品していました。そして彼の版画はそれらの国際展で受賞を重ねるなど高い評価を得ていました。需要を満たすための苦肉の策として制作を始めた版画ですが、菅井の考えをそのまま表現するには最も適したメディアであったのでしょう。

ツバメのヒナ

皆様こんにちは。

今年も、軒先に巣を作っていたツバメのヒナがすくすくと成長しています。

20190704 ツバメ2この光景も、ここ数年はすっかり毎年恒例になりつつあります。

(昨年の記事「軒先のツバメ」はこちら)

 

20190704 ツバメ1親ツバメを待つ間の顔が、なんとも愛らしいです。

 

 

さて、現在開催中の菅井汲展も、早いもので後半期へと入りました。

今展に合わせて作成したブックレットは、

A5のコンパクトサイズに菅井の版画作品の魅力を

ギュッと凝縮した一冊となっています。

菅井汲1

いつでもどこでも菅井の作品を眺めることが出来ますので、

ご来館の際には、是非お手に取ってみていただければと存じます。

展示スペースの都合上、陳列をしていない作品も本ブックレットには掲載しておりますので、そちらも併せてお楽しみください。

また、ご来館のお客様より、展覧会をご覧になった後に

「力強さを感じた」「まとまった作品を見たのは初めてだったので良かった」

等のお声を頂いており、受付・総務としても一スタッフとしても嬉しい限りです。

今後とも、作品の魅力を最大限にお伝えできるよう、スタッフ一同精進してまいります。

菅井汲展は今月21日(日)まで開催しています。

A.N

第9回 香水散歩 フランス
グラース・プロヴァンス美術歴史博物館

IMG_3979

こんにちは、クリザンテームです。

グラースでの香水散歩も、いよいよ終盤になってまいりました。今回は、約100年前にあたる1921年に、元大統領の子息とグラース最大の香水製造会社の令嬢との結婚がきっかけとなり創設された、プロヴァンス美術歴史博物館を訪問いたします!

香水散歩でご紹介してきた多くの美術館と同様、この美術館もまた、邸宅を改装したものですが、ここでは各居室に、建造時の18世紀の暮らしを彷彿とさせる内装が復元されています。それはさながらインテリア博物館とでも名付けたくなるようなもので、ここでは美しい調度品に囲まれたプロヴァンス貴族の往時の生活を見ることができるのです。

そのため館内を歩いていると、ここに暮らすマダムやムッシューと今にも行き合いそうな錯覚を覚えます。ですから、まさにここで、フランス国営テレビの人気ドラマの撮影が行われたことも納得してしまいました。

では、その優美な館内の見学をするといたしましょう。

1階の玄関ホールを抜けると、まず大広間が現れます。
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南仏の光に映える、鮮やかな若草色の壁紙に目が奪われます。

そこに配されているのはプロヴァンス産の高級家具。他の地方産の家具に比べて、明るい色合いの木材を使った、簡素ながらもエレガントな曲線を描く家具の数々です。

この邸宅が建てられたのは、1769年のこと。施主のプロヴァンス貴族のクラピエ=カプリ侯爵夫妻は、南仏で最も優雅な邸宅を目指し、ミラノ出身の建築家にこの館を設計させました。当時ここには、特別に誂えたパリの高級家具師による調度品も配されていたといいます。残念ながらそれらはほとんど散逸し、現在は17世紀から19世紀までのプロヴァンス家具を中心に構成されています。しかし結果的にはそのおかげで、パリやボルドー、リヨン等、他の地方の装飾美術館では味わえない、プロヴァンス家具の独自性を堪能することができるのです。
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大広間の両脇には、いくつも居室が連なります。比較的簡素な家具に比べて、カーテンをはじめとする布地の柄が、また鮮やかで愛らしいこと! しかも居室ごとに微妙に異なる(その細やかな違いを探すのもまた楽しい)、趣向を凝らしたプロヴァンスの布地が用いられています。

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「あら、もうこんなお時間!? まだ午前中かと思っておりましたのに……」いえいえ、こちらは時計ではありません。18世紀につくられたルイ15世様式の気圧計兼温度計です。このような当時の最新機器があるのも、この館に相応しいですね。IMG_3966

そして子供部屋には、愛嬌のある目をした木馬が置かれていました。よく見ると、尻尾までボンボンのお飾りが!しかもカーテンの色合いと調和しています。IMG_3965

このほか、1階にはバスルームやキッチンがあり、2階、3階へと上がれば、考古学から絵画、宗教美術、陶器、さらには照明器具などがまとめて展示され、プロヴァンスの長い歴史を知る最適の場所となっています。IMG_3978

なかでも、クリザンテームがこの美術館の面白さを感じるのは、都市の貴族生活だけではなく、土に根差した農民の姿をも同時にわかることです。

とりわけプロヴァンス・ワイン展示室では、道具とともに製造作業を伝える記録写真が展示されていて、深く印象に残りました。

例えば、ブドウ収穫に使う籠とともに、収穫時の写真(1944年)が。ブドウ籠

拡大すると……ブドウ摘み

大人も子供も一家総出で、さらに収穫を手伝いにくる季節労働者も一緒になってブドウを手摘みしています。彼らの表情のなんと晴れやかなこと!

お次は、なにやらみんなで楽しそうに絞っていますね。IMG_3974拡大

彼らのこの表情――フレッシュで気取りがなくて温かみがあって――は、まさにプロヴァンス産ロゼ・ワインの味わいと重なります。今後はワインを頂くたびに、これらが蘇りそうです。

お次は、ところ狭しと並んだブドウの入った瓶、そしてそこに話しかけるように水を注ぐおじいさん(しかもジャン・コクトー似!)。IMG_3975

愛情をこめて農作業に勤しむプロヴァンスの暮らし。グラースの香水も、このような土地から生まれたと思うと、いとおしさを一層感じました。

クリザンテーム

《今月の作品》
海杜 籠

こちらは苺がいっぱいに詰まった籠。《セント・ボトル》イギリス、チェルシー、1755-58年、海の見える杜美術館所蔵。

海杜 ブドウ摘み

本ブログ2回目の登場ですが、陽気にブドウを摘む彼女を今回は外せませんね。《セント・ボトル》イギリス、セント・ジェイムズ1760年頃、海の見える杜美術館所蔵。