第9回 香水散歩 フランス
グラース・プロヴァンス美術歴史博物館

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こんにちは、クリザンテームです。

グラースでの香水散歩も、いよいよ終盤になってまいりました。今回は、約100年前にあたる1921年に、元大統領の子息とグラース最大の香水製造会社の令嬢との結婚がきっかけとなり創設された、プロヴァンス美術歴史博物館を訪問いたします!

香水散歩でご紹介してきた多くの美術館と同様、この美術館もまた、邸宅を改装したものですが、ここでは各居室に、建造時の18世紀の暮らしを彷彿とさせる内装が復元されています。それはさながらインテリア博物館とでも名付けたくなるようなもので、ここでは美しい調度品に囲まれたプロヴァンス貴族の往時の生活を見ることができるのです。

そのため館内を歩いていると、ここに暮らすマダムやムッシューと今にも行き合いそうな錯覚を覚えます。ですから、まさにここで、フランス国営テレビの人気ドラマの撮影が行われたことも納得してしまいました。

では、その優美な館内の見学をするといたしましょう。

1階の玄関ホールを抜けると、まず大広間が現れます。
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南仏の光に映える、鮮やかな若草色の壁紙に目が奪われます。

そこに配されているのはプロヴァンス産の高級家具。他の地方産の家具に比べて、明るい色合いの木材を使った、簡素ながらもエレガントな曲線を描く家具の数々です。

この邸宅が建てられたのは、1769年のこと。施主のプロヴァンス貴族のクラピエ=カプリ侯爵夫妻は、南仏で最も優雅な邸宅を目指し、ミラノ出身の建築家にこの館を設計させました。当時ここには、特別に誂えたパリの高級家具師による調度品も配されていたといいます。残念ながらそれらはほとんど散逸し、現在は17世紀から19世紀までのプロヴァンス家具を中心に構成されています。しかし結果的にはそのおかげで、パリやボルドー、リヨン等、他の地方の装飾美術館では味わえない、プロヴァンス家具の独自性を堪能することができるのです。
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大広間の両脇には、いくつも居室が連なります。比較的簡素な家具に比べて、カーテンをはじめとする布地の柄が、また鮮やかで愛らしいこと! しかも居室ごとに微妙に異なる(その細やかな違いを探すのもまた楽しい)、趣向を凝らしたプロヴァンスの布地が用いられています。

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「あら、もうこんなお時間!? まだ午前中かと思っておりましたのに……」いえいえ、こちらは時計ではありません。18世紀につくられたルイ15世様式の気圧計兼温度計です。このような当時の最新機器があるのも、この館に相応しいですね。IMG_3966

そして子供部屋には、愛嬌のある目をした木馬が置かれていました。よく見ると、尻尾までボンボンのお飾りが!しかもカーテンの色合いと調和しています。IMG_3965

このほか、1階にはバスルームやキッチンがあり、2階、3階へと上がれば、考古学から絵画、宗教美術、陶器、さらには照明器具などがまとめて展示され、プロヴァンスの長い歴史を知る最適の場所となっています。IMG_3978

なかでも、クリザンテームがこの美術館の面白さを感じるのは、都市の貴族生活だけではなく、土に根差した農民の姿をも同時にわかることです。

とりわけプロヴァンス・ワイン展示室では、道具とともに製造作業を伝える記録写真が展示されていて、深く印象に残りました。

例えば、ブドウ収穫に使う籠とともに、収穫時の写真(1944年)が。ブドウ籠

拡大すると……ブドウ摘み

大人も子供も一家総出で、さらに収穫を手伝いにくる季節労働者も一緒になってブドウを手摘みしています。彼らの表情のなんと晴れやかなこと!

お次は、なにやらみんなで楽しそうに絞っていますね。IMG_3974拡大

彼らのこの表情――フレッシュで気取りがなくて温かみがあって――は、まさにプロヴァンス産ロゼ・ワインの味わいと重なります。今後はワインを頂くたびに、これらが蘇りそうです。

お次は、ところ狭しと並んだブドウの入った瓶、そしてそこに話しかけるように水を注ぐおじいさん(しかもジャン・コクトー似!)。IMG_3975

愛情をこめて農作業に勤しむプロヴァンスの暮らし。グラースの香水も、このような土地から生まれたと思うと、いとおしさを一層感じました。

クリザンテーム

《今月の作品》
海杜 籠

こちらは苺がいっぱいに詰まった籠。《セント・ボトル》イギリス、チェルシー、1755-58年、海の見える杜美術館所蔵。

海杜 ブドウ摘み

本ブログ2回目の登場ですが、陽気にブドウを摘む彼女を今回は外せませんね。《セント・ボトル》イギリス、セント・ジェイムズ1760年頃、海の見える杜美術館所蔵。

 

 

第8回 香水散歩 フランス
グラース・フラゴナール香水博物館 

 

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こんにちは、クリザンテームです。今回もグラースでの香水散歩が続きます。なにしろ、世界の香水製造の中心地たるグラースには、その豊かな文化を物語る史跡や美術館が目白押しなのです。

今回訪れたのは、フラゴナール香水美術館です。

「フラゴナール」の名を聞くと、18世紀フランスの宮廷画家でグラース出身のジャン=オノレ・フラゴナールを、真っ先に思い出される方がいらっしゃるかもしれませんね。かくいう私もその一人でした。フラゴナールの父は、宮廷における手袋と香水の責任者でありました。この美術館を運営するのは、1926年創業の南仏を代表する香水製造会社フラゴナール社。その社名は、絢爛たるフランス宮廷文化を彩った、フラゴナール一家にちなんでつけられたものなのです。

フラゴナール社の製品は、南仏らしい明るい色彩を多用した、フランスのエスプリ溢れるパッケージ・デザインやグッズでも知られ、パリのサン=ジェルマン・デ・プレやオペラ、ルーヴル美術館カルーセル店をはじめとするフランス各地のブティックは、いつも多くの女性たちで溢れています。

社はまた、その豊かな香水瓶コレクションも名高く、グラースとパリにそれぞれ美術館を持っています。

こちらはパリのフラゴナール香水美術館。

パリ2

そして、こちらがグラースの香水美術館入り口。

入り口

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両館とも、古代から現代までの膨大な香水瓶コレクションが年代順に陳列されていて、香水瓶の歴史を一望できる作りとなっていますが、その楽しみ方は少し異なっています。

パリの美術館は解説者つき見学が主であるのに対し、グラースでは、来館者の心の赴くまま自由に見られます。またグラースの展示空間は、個人の邸宅に招かれたかのような設えであることも、楽しみの一つでしょう。そのおかげで、より寛いだ気持ちでコレクションを味わえるのです。

例えば、こちらは古代世界の香水瓶展示室。シックな壁色にシャンデリアが映えますね。

内部1

壁の色は、各時代に合わせて塗り分けられています。その色合いのセンスが、また秀逸。

日が射し込んだときのワインボトルのようなライムグリーンや、鮮やかなカシス・レッド、はっとするようなモーヴ色など、これぞフレンチ・シック!とつい言いたくたるような、ニュアンスのある色たちが、各時代の雰囲気を伝え、また美術館全体の印象をさらに強めています。

内部2

こちらは、香水のラベルと香水製造機械の展示。

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内部3

こちらは多種多様なポマンダーがずらりと陳列されています。海の見える杜美術館のお仲間たちがここでも見出せました!

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キャビネットを中心に、古代エジプトのアラバスター製容器、古代ギリシャのアリュバロス、ルネサンス以降のポマンダー、17世紀以降のガラス製、18世紀以降の陶器製やクリスタル製の香水瓶、ネセセール……と歴史を代表する名品が展示されているのですが、クリザンテームがとりわけ注目したのは、グラースならではの芳香容器「ベルガモット」のコレクションです。

こちらです!

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「ベルガモット」とは、18世紀、グラースで栽培された、ミカン科の香木ベルガモット(紛らわしいですね!)の樹皮で作られた小箱です。掌サイズの箱には、優しい色合いのテンペラ画が施されています。アールグレイを淹れると、にわかにふわっと立ち上る、柑橘系のあの芳香がする小箱たち。生活におけるなんと洒落た演出なのでしょう!

画像を拡大して見ると……

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18世紀、グラースのブルジョワ階級の人々にとってベルガモットは欠かせないものでした。彼らはこの中に、キャンディ、嗅ぎ煙草、アクセサリー、ちょっとした思い出の品といった、思い思いの品をおさめていました。技を極めた職人の作る貴重な材の香水瓶もいいものですが、このような樹皮製の小箱も、生活が垣間見えるようで面白いですね。

ちなみに、デメル社やドゥバイヨル社などの、乙女心が刺激される愛らしい図柄のチョコレートの空き小箱を捨てられずに、ついついちょっとした小物を入れしまうクリザンテームは、18世紀のグラースの人々に勝手に親近感が湧いてしまいました!

さて、この美術館の独自性はこれだけではありません。地階において、香水の製造工程の解説ツアーが定期的に催されているのです。

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ずらりと並んだ蒸留器などの機械を前にして聞く解説が、また面白いのです。

男性用香水と女性用香水の成分の違いや、工程に要する時間など、知っていそうで実はよく知らない情報を、丁寧に教えて頂きました。

最後は、ミュージアムショップで、見学の余韻を味わいながら、フラゴナール社の製品選びを楽しみました。

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ふと気づくと、窓の外に夕闇が迫っていました。

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クリザンテーム

《今月の一点》

ポマンダー

 

《ポマンダー》ドイツ、アウグスブルグ、1700-1720年頃、銀、銀に金メッキ、七宝、海の見える杜美術館所蔵

 

 

 

 

 

 

 

 

第7回 香水散歩 フランス
グラース国際香水博物館 後編

表紙

こんにちは、クリザンテームです。前回に引き続き、今回もグラース国際香水博物館での香水散歩が続きます。

順路に沿って展示室を巡る間、ひときわ感慨深く拝見した一連の展示品がありました。

おそらく作品保存上の理由でしょう。ほの暗い照明の下、ひっそりと展示されているのですが、引き出し式ケースにおさめられた皮手袋を見落とすわけにはいきません。というのも、それは、グラースが香水の町となった機縁を物語るからです。

手袋

かつてグラースは、高品質のなめし皮の産地として何世紀にもわたりその名を知られる存在でした。なめし皮には独特のあまり好ましくない匂いがつきものです。そこで考案されたのが、香り付きの皮革製品でした。

そもそも皮革製品に香りを付ける伝統は、アラブに由来し、スペイン経由でヨーロッパに伝えられたものです。香り付き皮革製品は、当然パリでも生産されていましたが、南仏に位置するグラースは花々の大規模栽培に成功したため、香りつきの皮革製品、とりわけ香り付き手袋でグラースが名を馳せるようになったのです。

展示室の片隅にさりげなく置かれた皮手袋に、この町の歴史が詰まっているのですね!

今日のグラースは、世界に名だたる調香師と香水を輩出し続けています。博物館には、そのようなお土地柄ならではの、香りそのものを楽しめる仕掛けが数多くあるので、童心に戻りワクワクしてしまいます!

例えば、こちらはボタンを押すと、その香りが噴射される機械。クリザンテームは、その日、鼻の調子があまりよろしくなかったのですが、博物館へ向かう道すがら、通りの薬局で求めた天然ハーブ鼻スプレーのおかげで、すっかり調子を取り戻し、様々な香りを楽しむことができました。

ネロリの甘やかな香りが漂ってきました!

ネロリの甘やかな香りが漂ってきました!

でも自然に囲まれたグラースにせっかくいるのですもの、天然の香りも味わいたいわ……という望みも、博物館は叶えてくれます。前編でお伝えした中庭の他にも、本格的なハーブガーデンを有する空中庭園を備えているのです。

そのハーブガーデンへと通じる廊下の壁には、天然香料が展示されています。

香料の先に、ハーブガーデンが垣間見えるとは、なんと洒落た演出!

香料

そしてこちらが、ハーブガーデン入り口です。

ガーデン入り口

ハーブガーデンは温室エリアと、屋外エリアに分かれています。そのいずれからも、周囲の歴史ある街並みが同時に楽しめます。

ガーデン屋外

ガーデン屋外

温室の壁には、香料となる植物の世界分布図が。勉強になります!

世界地図
各植物の説明も詳細で、これまた勉強になります!

例えば、こちらはタイム。香りの特徴はもちろんのこと、シャネル社「アンテウス」、ケンゾー社「ケンゾー プール オム」等、香料として使われた香水名まで記されています。
タイム

温室

芳香を味わいながら、香りの歴史や今日の使われ方を深く知ることができる博物館の訪問を終えて、グラースが私の中でさらに特別な町となりました。

 

クリザンテーム

 

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ケース付き《香水瓶》フランスまたはスイス、1785年頃、透明ガラス、金、七宝

、海の見える杜美術館所蔵

 

 

 

 

 

 

 

 

第6回 香水散歩 フランス
グラース国際香水博物館 前編

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こんにちは、クリザンテームです。

香水の歴史を知るために、雨空や曇り空が続く冬のパリから、南仏の避寒地コート・ダジュールへとやってまいりました。地中海に面したカンヌやニースから小高い山間部へとのぼると、近代香水発祥の地である小さな町グラースがあるからです。

そのあちらこちらには、香水の研究所や香水専門店、そしてもちろん博物館があり、少し足を延ばして郊外へといけば、グラースの豊かな歴史を支え続ける数々のお花畑があります。それらの写真を見るにつけ、またこの地で数々の香りを嗅ぐにつけ、今回は時期がかなわなかったものの、次こそはラヴェンダーの季節に戻ってこようとの思いが強まります。

グラースには、香水に関する博物館がいくつもあるのですが、まずはもっとも規模の大きい国際香水博物館をのぞいてみました。

エントランスを抜けると、巨大な香水工場に入ったような内装に驚かされます。

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と思うと、邸宅のような建物に迷い込んだり……

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と思うと、冬の果実が彩る、魅力的な中庭に不意に行き当たったり……(あれ!?外に出てしまった?)

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この階段はのぼるべきか否か……また迷子になりそうな予感と好奇心の狭間で悩みます。

この階段はのぼるべきか否か……また迷子になりそうな予感と好奇心の狭間で悩みます。

展示室の次なる扉を開けると、思いもよらぬ空間が待っています。いくつもの建物が連結した広大な博物館内は、入り組んでいるのですね。なにしろ、エントランスと出口も違うほどですので、方向音痴のクリザンテームには大変です!

 

さて、展示室の構成は、海の見える杜美術館の常設展示室同様、古代エジプトから現代までの香りの容器が時代と地域ごとに分類展示されています。順路が正しく辿れた暁には(!)、香りの悠久の歴史を辿ることができるでしょう。

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順路に沿って、古代から……

香りの器がずらりと並ぶ古代ギリシャ・ローマ展示室。

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18世紀展示室では、これこそ究極のネセセールのひとつと、つい言いたくなるような作品が見られます。象牙製ケースにおさめられた、マリー=アントワネットの旅行用ネセセールです。

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20世紀は、社会の大きな出来事の記述ともに、なんと一年毎に代表する香水瓶が展示されています!

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順路通りに辿れず、戻ってしまった時代の展示室では……

まあ!とても親近感の湧く二つの香水瓶が! このように海杜のコレクションのお仲間たちもこちらでは多数発見できます。その相違を確かめるのもまた楽しみのひとつですね。

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次回の後編では、グラース香水博物館の調香に関する展示室や、皮手袋について取り上げます。香水散歩をまたご一緒にお楽しみくださいませ。

 

クリザンテーム

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《セント・ボトル》イギリス、セント・ジェイムズ1760年頃 右《双口セント・ボトル》イギリス、セント・ジェイムズ1755年頃、ともに海の見える杜美術館所蔵

 

 

 

 

 

 

 

第5回 香水散歩 パリ装飾美術館
「ジャポニスムの150年」展

パリ

こんにちは、クリザンテームです。

今回は再びパリから最新情報をお届けします。 本年2018年は、日本とフランスにとって、交流160周年という記念の年です。この春、当館で開催された「香水瓶の至宝展」のチラシの片端にも、小さくそのマークが記されているのはお気づきになられましたか?

香水瓶ちらし表紙

↑ここです!

↑ここです!

パリ装飾美術館、ミュージアムショップのショー・ウィンドウもジャポン一色!

パリ装飾美術館、ミュージアムショップのショー・ウィンドウもジャポン一色!

今年2018年のフランスでは、各地で関連イベントが行われています。伝統芸能や現代演劇の野田秀樹や宮本亜門演出作品の上演や講演会等々、華々しい催しが盛りだくさんですが、もちろん美術館も例外ではありません。

魅力あふれる数多の展覧会の中でも、私が最も楽しみにしておりましたのは、11月中旬からパリ装飾美術館で始まりました「ジャポニスムの150年」展です。

貴重なパリ万博資料をはじめ、パリ装飾美術館や国立ギメ東洋美術館等のフランスの美術館が所蔵する日本美術コレクションや、日本美術に影響を受けたフランス人芸術家の作品、さらには現代日本の工芸品やドレスなどが、2000㎡を超える展示会場に陳列されています。約1400点というその膨大な出品点数たるや、どれほどのものであるのかがおわかり頂ける画像がこちらです。

展示室

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このような展示室がいくつも続きます! 一点一点をじっくりと見る場合、期間中に何度も足を運ばなくては、すべてを見終えられないでしょう。

そこで訪問第1回目は、限られた時間の中で、主要作品を中心に展示全体を見ようと努めました。とはいえ、当館所蔵の香水瓶でも人気の高い、宝飾デザイナーのリュシアン・ガイヤールが手掛けたかんざしは、その美しさに思わずため息が出て、時間を忘れて拝見してしまいました。

アール・ヌーヴォーを代表する芸術家として名を馳せたガイヤールは、植物の表現が実に巧みです。

リュシアン・ガイヤール《かんざし、スピノサスモモの花》1904年頃、べっ甲、ダイヤモンド、金、銀、パリ装飾美術館蔵

リュシアン・ガイヤール《かんざし、スピノサスモモの花》1904年頃、べっ甲、ダイヤモンド、金、銀、パリ装飾美術館蔵

こちらは、当館所蔵のヤグルマギクをモチーフにした、リュシアン・ガイヤールが手掛けた香水瓶。クラミー社、デザイン1913年。

こちらは、当館所蔵のヤグルマギクをモチーフにした、リュシアン・ガイヤールが手掛けた香水瓶。クラミー社、デザイン1913年

本展覧会は、その斬新な展示方法でも、学芸員としてはメモをとることしきりでした。例えばこちらはクリザンテーム、つまり「菊」をモチーフにした作品の展示室。展示台がアヴァンギャルドですね。

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まるで展示台が浮いているようです!

私が美術館を訪れたのは、来館者が比較的少ない平日の昼下がりでした。展示室を巡っていると、お話好きなパリジェンヌたちに何度も話しかけられました。そして、その度ごとに、ついつい長話……。本展覧会の訪問第1回目の時間は、あっという間に過ぎていきました。

しかしながら、美術鑑賞を通じて互いが身近に感じられる、日仏交流160周年という特別な年を満喫いたしました。

思いがけないちょっとしたおしゃべり、長い年数をかけて使用するからこそ起こる数々の故障類……、何をするにも予想外に時間がかかる、このフランス時間が、ときに人生には必要なのかもしれませんね。

 

クリザンテーム

 

この季節にぴったりの松かさをモチーフにしたデザイン。 リュシアン・ガイヤール《香水瓶、松かさ》1913年頃、ニース・フロール社、海の見える杜美術館所蔵

この季節にぴったりの松かさをモチーフにしたデザイン。
リュシアン・ガイヤール《香水瓶、松かさ》1913年頃、ニース・フロール社、海の見える杜美術館

季刊誌「Promenade Vol.28」情報

12月に入り、寒さも本格的になってまいりました。

杜の遊歩道では、黄色だったタイワンフウが燃え上がるように紅く染まり、

空と美しいコントラストを作り上げています。

紅葉はまだしばらくお楽しみいただけそうです。

20181205 タイワンフウ

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また、現在開催中の企画展「西山翠嶂~知られざる京都画壇の巨匠~」も

早いもので折り返しへと差し掛かっております。

さて、このたび、当館発行の季刊誌「Promenade Vol.28」冬号が完成いたしました。

現在の香水瓶展示室や、西山翠嶂展の魅力をご紹介する

凝縮された1枚となっております。

PromenadeVol.28-1

PromenadeVol.28-2

A.N

第4回 香水散歩 東京都庭園美術館
「エキゾティック×モダン、 アール・デコと
異境への眼差し」展内覧会 後編

こんにちは、クリザンテームです。

前回同様、東京・白金にある東京都庭園美術館で開催の「エキゾティック×モダン、アール・デコと異境への眼差し」展オープニングレセプションと内覧会の夜が続きます。

さて、ポール・ポワレ着用のガウン《ローブ》の展示場所も、また忘れがたきものでした。美術館のロゴマークにも採用された、アンリ・ラパンのあの名高き《香水塔》の隣に並んでいたのです。

poiret robe 4MP   香水塔

会場風景 ポール・ポワレ《ローブ》の後ろにアンリ・ラパン《香水塔》

 

私は、ちょうど一年ほど前「香水瓶の至宝展」図録の翻訳作業中に出合った、ポワレの次の言葉を思い出しました。

「私のドレスは、あなたの身体のために作るもの。

私の香水は、あなたの魂のために作りたい」

これは、香りが精神に及ぼす効果をよく理解していた、ポワレならではの言葉と言えるでしょう。

展示風景 ブロデールやバルビエのデザイン画やポワレのアフタヌーン・ドレスが、壁の装飾にぴったり合っていますね!

展示風景 ブロデールやバルビエのデザイン画やポワレのアフタヌーン・ドレスが、壁の装飾にぴったり合っていますね!

ところで、当時の異文化へのまなざしを考える上で、1931年にパリで開催された「植民地博覧会」に象徴される、当時の植民地の存在が看過できぬことも、この展覧会は教えてくれます。

展示室をめぐりながら、一アジア人として、また一日本人として、時代と表現をどのようにとらえ、未来に活かすのかを、鋭く突き付けられました。

 

会場風景 フランソワ・ポンポン《シロクマ》1923-33年とジャン・デュナン《森》20世紀前半

会場風景 フランソワ・ポンポン《シロクマ》1923-33年とジャン・デュナン《森》20世紀前半

雨後の清らかな香り先で、見応えのある展覧会に出合い、ふと立ち止まって歴史を考える、いい時節になったことを実感いたしました。

クリザンテーム

「香水瓶の至宝」展時(2018年3月~7月)に公開した、ポール・ポワレ・ロジーヌ社の《香水瓶》1912年頃、透明ガラス、七宝、海の見える杜美術館美術館蔵。 なんと手描きです!

「香水瓶の至宝」展時(2018年3月~7月)に公開した、ポール・ポワレ・ロジーヌ社の《香水瓶》1912年頃、透明ガラス、七宝、海の見える杜美術館美術館蔵。
なんと手描きです!

本記事執筆にあたり、ご協力頂きました東京都庭園美術館の関昭郎氏に心より御礼申し上げます。

写真は、内覧会にて主催者の許可を得て撮影したものです。

「エキゾティック×モダン、アール・デコと異境への眼差し展」

会場:東京都庭園美術館

開催日:2018年10月6日(土)~2019年1月14日(月・祝)

開館時間:11:00-18:00 (夜間開館あり、詳細は下記公式ウェブサイトご参照ください)

休館日:第2・第4水曜および年末年始

2019年1月22日(火)より群馬県館林美術館に巡回

https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/

第3回 香水散歩 東京都庭園美術館 
「エキゾティック×モダン、 アール・デコと
異境への眼差し」展内覧会 前編

庭園美術館

こんにちは、クリザンテームです。

金木犀の甘い香りに誘われて、そぞろ歩きに心が弾む季節ですね。とりわけ、雨上がりの静かな庭を散策するのは、至福のひとときです。もしその先に、美しい作品の数々が待っていたら……、その喜びを表すのに、どれほど言葉を尽くせばよろしいのでしょう。

このほど、東京・白金にある東京都庭園美術館で開催の「エキゾティック×モダン、アール・デコと異境への眼差し」展オープニングレセプションと内覧会を顧みると、私はまさにそのような思いを抱くのです。

緑深い庭園の先に佇む、優美なアール・デコ様式の旧朝香宮邸を、今に伝える東京都庭園美術館。

海の見える杜美術館所蔵の香水瓶コレクションが、東京で公開された折も(「香水瓶の世界 きらめく装いの美」展、2010-11年)、会場はこの美術館でしたが、こちらは、装飾芸術と自然の豊かな香りを同時に堪能できる、東京随一の美術館と言えるのではないでしょうか。

さて、本展覧会は、フランスにおけるアール・デコの代表的な芸術家たちが、非ヨーロッパ圏の異文化をいかに見つめ、制作に活かしたのかをテーマとしたものです。アフリカやアメリカ、アジアに取材した装飾品や家具、絵画、彫刻はもちろん、貴重な資料がずらりと並び、時代の姿を立体的に見ることができます。

グルー4MP ドレス2MP展示風景 左:アンドレ・グルー《椅子》1924年頃のセットを中心に。右:ポール・  ポワレ《デイ・ドレス》1920年頃、東京都庭園美術館蔵

 

なかでも私は、ファッション・デザイナー、ポール・ポワレ自身が着用した室内用ガウン《ローブ》(1920年頃)が、深く印象に残りました。

ほっそりとしたシルエットのドレスやデザイン画が並ぶなかにあって、恰幅のよい彼の体に合わせたガウンには、時代の先駆者としての彼の威厳と自信が伝わってくるようで、その存在感に圧倒されたのです。

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会場風景 ポール・ポワレ《ローブ》の後ろにアンリ・ラパン《香水塔》

 

赤い生地に龍文様が鮮やかに浮かび上がるこのガウンは、ポワレが設立した香水製造会社ロジーヌ社の香水瓶「ニュイ・ドゥ・シーヌ(中国の夜)」(1913年)と同様、中国から想を得たものでした。

その堂々とした存在感を前にすると、裾の広がったシルエットを、本展覧会企画者の関昭郎氏が「清朝の皇帝服のよう」とご指摘なさるのも頷けます。

さて次回の後編では、本展覧会テーマの背景を取り上げます。どうぞお楽しみに!

クリザンテーム

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「ニュイ・ドゥ・シーヌ(中国の夜)」の香水瓶、1913年、厚紙、布、絹、海の見える杜美術館蔵

 

本記事執筆にあたり、ご協力頂きました東京都庭園美術館の関昭郎氏に心より御礼申し上げます。

写真は、内覧会にて主催者の許可を得て撮影したものです。

 

「エキゾティック×モダン、アール・デコと異境への眼差し展」

会場:東京都庭園美術館

開催日:2018年10月6日(土)~2019年1月14日(月・祝)

開館時間:11:00-18:00 (夜間開館あり、詳細は下記公式ウェブサイトご参照ください)

休館日:第2・第4水曜および年末年始

2019年1月22日(火)より群馬県館林美術館に巡回

https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/

19世紀の香水瓶

10月に入り、いつの間にか秋の風を感じる季節となりました。
朝夕は次第に肌寒くなってきましたので、お体にはお気をつけてお過ごしください。

当館では、今年の春に開催された「香水瓶の至宝~祈りとメッセージ」展の
出品作241点のうち52点の香水瓶を常設展としてご紹介致しております。

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今回は、私の大好きな19世紀の香水瓶を紹介致します!

DSC06045 - コピーDSC06047 - コピー《香水瓶》 ブシュロン社 フランス 1890-1900年

19世紀には、クリスタル製や宝石をちりばめた香水瓶が多く作られたそうです。

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《香水瓶》 (オリーブ・エ・ミリレ) フランス 1860年頃

香水瓶の至宝の展覧会チラシの表紙を飾っていた香水瓶。

卵型のブラッドストーンに金銀細工を被せたもので、さらにその装飾の上には真珠やダイヤモンド、 ルビーなどの宝石がふんだんにあしらわれ、思わず見入ってしまう
ほどの美しさです。

DSC06052 - コピーDSC06051 - コピー《香水瓶》 フランス 1900年

葉のついた枝先にルビー、ピンク・サファイヤ、エメラルドがあしらわれ、
多色の花々を咲かせたデザインがとても素敵です。

 

いつもは受付に座っているのですが、時間を見つけては香水瓶展示室を訪れて
目の保養にしています。

お客様から「きれーい!」「初めてみたー!」という静かなつぶやきが
聞こえてきた時、とても嬉しく思うと同時に、「そうですよね!」と
心のなかで喝采している今日この頃です。

また、只今開催中の
「西南戦争浮世絵 さようなら、西郷どん」も残すところ10日となりました!
香水瓶とあわせて西南戦争浮世絵の世界もご堪能ください。

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                                                                                                                                      o.s

 

香水瓶展示室

このたびの展覧会「西南戦争浮世絵 -さようなら、西郷どん-」開催と同時に、
香水瓶展示室が新設されました。

20180807香水瓶展示室

紀元前から現代まで、5000年にわたる香水瓶の名宝をいつでも見ることができます。

不定期に展示替えが行われるので、開室時期などホームページでご確認ください。

クレオパトラの時代の香水瓶は? マリー=アントワネットの時代の香水瓶は?

10月14日(日)までは確実に展示されています。

うみひこ