裸木の造形美

11月も終わりに近づき

杜の遊歩道の木々たちの落葉も進む。

裸木となるものもちらほら現れ

冬の到来を告げてくれています。

「枯れ木も山の賑わい」というが

木々にとっては 腑に落ちない言葉だと思う。

木々の幹ひとつひとつに 異なる造形があり

奥深い美的な景観には 見事というほかはない。

今日の一枚。
20151124 裸木の造形美

N.T

秋の深まり

杜の遊歩道も秋が深まり 落葉樹は染まった葉を 少しずつ落とし始めました。

樹に残っている葉は単色で美しく

地の上に散った葉は 異なる色の葉と混じり合い なお一層美しい。

自然界の彩りは 互いの色を常に引き立て合っていました。

自然を愛でていると なんだか色彩感覚が養われそうです。

今日の一枚。
20151112 秋の深まり

N.T

名古屋 美術館めぐり②

前回の記事に続いて、名古屋の美術館に行った感想です。
「展覧会の紹介なのに記事にするのが遅すぎる」という(内部からの)野次が飛んできています。
私もまったくもってそう思います。この記事で紹介させていただく展覧会、一ヶ月以上前に終わってますからね。我ながらひどいもんですよ。でも書きますよぉ!

「芸術植物園」、こちらは10月3日まで愛知県美術館にて開催されていた展覧会です。

図録も素敵!フォントやイラストがおしゃれだ~。

ブロ原稿20151105 名古屋 美術館めぐり㈪−1ブログ原稿20151105 名古屋 美術館めぐり㈪−2
このページにある、ロバート・ジョン・ソーントン編《フローラの神殿》(町田国際版画美術館蔵)を一度見てみたかったのです。これは、博物学者リンネの植物の分類学に感銘を受けたソーントンが編集して世に出した植物図版集です。1798~1807年に初版が刊行されました。
植物の姿は博物学的知識に忠実に描かれていますが、背景(そもそも背景がある植物画も珍しいのですが)は古城や異国風の建物など、その植物が生えている環境とはほぼ無関係な場面。キューピッドがいる絵もあります。これらの絵には植物学的な解説に加えてその植物にまつわる神話や詩もついていたとのこと。学問と幻想の融合ですね。いくら見ても見飽きない、この美しい豪華な図版集を当時手にすることができた人は幸せだっただろうと思います。ウィキペディアで調べた限りですと、ソーントン自身は出版の資金繰りに苦労した上に破産して極貧の中亡くなったようですが。
展示では、壁一面にこれらがずらーっと並んでいました。一枚一枚が結構大きくて迫力ありました。見ることができて本当によかったです。

ブログ原稿20151105 名古屋 美術館めぐり㈪−3
こちら私は初めて知りましたが、五百城文哉(いおきぶんさい)という画家が描いた明治期の作品《百花百草図》(栃木県立美術館蔵)。縦140センチを越える大きな作品です。この生々しい風景や植物を描いた作品が、油絵ではなく、絹地に水彩で描かれています。軸装されている作品です。こんな絵が描かれていたなんて、明治という時代は奥が深いなぁと思いました。小杉放庵記念日光美術館で今まで何度かこの画家の展覧会を開催していらっしゃるようですね。

他にも、現代の作家の方の作品、古い植物図譜、日本画洋画、ありとあらゆる植物の芸術があっていろんな刺激があり、最初から最後までずっと楽しかったです!見終わったときはまるで植物園の中を歩いた後のようなすがすがしさ。

展示室を出ると、こんなかわいらしいスペースがあって、
ブログ原稿20151105 名古屋 美術館めぐり㈪−4
色々な参加型のプログラムが用意されていました。
大人もOKとのことでしたので、せっかくなので参加させていただきました。

ブログ原稿20151105 名古屋 美術館めぐり㈪−5
色々な素材を組み合わせて、自分で架空の植物を作る「新種植物押葉記録」。
自由に作っていいにも関わらず、いわゆるお花のかたちから抜け出ることができず…私の頭からはこれが限界でした。植物名「ホウショクノジダイデス」、一応食虫植物で手に似た葉で積極的に虫を捕まえるという設定です。名前に特に意味はありません。適当につけました。

強行軍での美術鑑賞とはなりましたが、この2つの展覧会から、とてもいい刺激いただきました。遅筆なのでブログでのご紹介がいつも遅れるのですが、今後もここでこっそり色々展覧会を紹介させていただきますね。

それでは!

ホンモノ? ニセモノ?

海の見える杜美術館所蔵の引札(商店がお客様に配った広告)を整理していると、竹内栖鳳の落款のある作品を2点見つけました。

20151106ホンモノ ニセモノ 《龍虎図》
引札《龍虎図》

20151106ホンモノ ニセモノ 《旭日青竹清流に虎》
引札《旭日青竹清流に虎》

竹内栖鳳は、掛け軸や屏風といった日本画の型にこだわらず、いろいろな素材に絵を描いた人です。たとえば団扇絵もたくさん描いていますし、珍しいところでは、墨のデザインも手掛けているので、引札のデザインをしていたとしてもおかしくはありません。


竹内栖鳳『団扇画綴帖』より《青竹に烏瓜》 (海の見える杜美術館蔵)

20151106ホンモノ ニセモノ 竹内栖鳳 墨銘《ぬれからす》
竹内栖鳳 墨銘《ぬれからす》 鳩居堂製 (使用済み)(海の見える杜美術館蔵)

ですからほんの一瞬、新発見作品かと期待が膨らんだのですが、
一見して竹内栖鳳らしくありません。栖鳳は旧弊を打ち破って次々と新しい絵画表現に取り組んだ革新的な作家のはずなのに、これらの引札からは、何かの絵の手本を引き写したかのような旧態依然とした印象を強く受けるのです。

栖鳳の残された絵をいろいろ調べてみましたが、同じような作品は確認できませんでしたし、念のため栖鳳が若いころ勤めて刺繍画などを手掛けた高島屋に写真でも資料が残っていないかと廣田孝『高島屋「貿易部」美術染色作品の記録写真集 京都女子大学研究叢刊47』(京都女子大学2009年)をめくってみたりしたのですが、やはり似た絵を見つける事は出来ませんでした。

それでは真贋判定の基本、落款の書体や印章の形はどうでしょうか、

20151106ホンモノ ニセモノ 《龍虎図》-2
引札《龍虎図》(落款 印章)

20151106ホンモノ ニセモノ 《旭日青竹清流に虎》-2
引札《旭日青竹清流に虎》(落款 印章)

まず印章を見てみましょう。栖鳳が実際に使用していた400種類以上もの印の中から、下の2つがとても似ていることがわかりました。

20151106ホンモノ ニセモノ 芸猿図
《芸猿図》より(海の見える杜美術館蔵)

20151106ホンモノ ニセモノ  港頭春色
《港頭春色》より(海の見える杜美術館蔵)

とても似ています。しかし、いずれも細部が異なりますので、引札に使われた印は似せて作られもので、栖鳳が所有する印を使ってはいないことがわかります。

落款の書体はどうでしょうか。詳細な分析は割愛しますが、本人の筆跡とは感じが違います。特に《旭日青竹清流に虎》の鳳の字は、抑揚の弱い、栖鳳の特徴とは異なる書体になっています。

ひとつの参考として、似ている栖鳳の落款を提示しておきますので見比べてみてください。

20151106ホンモノ ニセモノ 烏鷺図 (2)左隻  20151106ホンモノ ニセモノ 烏鷺図 (1)右隻 《烏鷺図》屏風(海の見える杜美術館蔵)

制作年代から考えるとどうでしょうか。これらの引札には制作年代の根拠となる情報は残されていません。そこで唯一の手掛かりともいえる落款の特徴から推定すると、明治末から大正初めの1910年頃が考えられます。1900年のヨーロッパ周遊から帰国して《飼われたる猿と兎》(東京国立近代美術館蔵)をはじめとしたリアルな動物の描写で数々の名作を生み出している頃です。この時に栖鳳が古い時代を踏襲しただけのような絵を描いて引札にするとは考えにくいのではないでしょうか。

栖鳳が描いた虎の一例をご覧ください。緻密なスケッチを繰り返して生み出された作品からは、たたずまいから毛並みまで、動物の本質に迫ろうとする姿勢がひしひしと伝わってきます。


UMI60《臥虎》(部分)(海の見える杜美術館蔵)

以上のことをふまえると、これらの引札の絵を竹内栖鳳が描いたと断定するのは難しいと思います。

 

引札は、商店や商品の名前を印刷して、宣伝のために配られるものですから、現在目にするものの多くには、絵だけではなくいろいろな文字が印刷されています。

20151106ホンモノ ニセモノ 陶器商 桂田留三郎
陶器商 桂田留三郎(海の見える杜美術館蔵)

20151106ホンモノ ニセモノ 炭薪売捌問屋 国松松之助
炭薪売捌問屋 国松松之助(海の見える杜美術館蔵)

栖鳳の名前が記された2枚の引札には、文字が印刷されていませんし、裏には商品番号のようなものが捺印されているので、引札の商品見本、あるいは後から名前を入れる名入れ引札のようです。

20151106ホンモノ ニセモノ《龍虎図》裏      20151106ホンモノ ニセモノ 《旭日青竹清流に虎》裏
《龍虎図》(裏)   《旭日青竹清流に虎》(裏)

明治時代の終わり、あるいは大正時代の初めごろ、きっとこの引札に商店名を印刷してお得意様に配って回ったお店があったはずです。

そしてこの引札をもらった人は、好きなところに貼っては眺めて、栖鳳の絵を飾った気分になれたのかもしれません。

 

ちなみに、栖鳳は絵を複製することに積極的な人でしたから、本物の複製版画もあります。
ところがこだわり抜いて作った複製版画の中には、あまりに精巧で、美しすぎて、本物の“作品”として出回ってしまう事もあります。

20151106ホンモノ ニセモノ  《海の幸》
《海の幸》(海の見える杜美術館蔵)

これは複製版画です。
部分を拡大してみても、とても版画とは思えない美しさです。

20151106ホンモノ ニセモノ 《海の幸》部分
《海の幸》(部分)

 

さち

森下麻衣子さま

とても興味深い展覧会ですね・・・・って、
その展覧会あと3日しかないじゃないですかぁ・・・。
これからもっと早く書いてください!!

徳川美術館・蓬左文庫開館80周年記念秋季特別展
茶の湯の名品
11月8日(日)までですので、お見逃しなく。

「刀剣乱舞」いいですよね。
麻衣子さん、当館の作品はゲームキャラクターになりませんか?
そうだ! NTさん、Webページ作ってくれてるけど、ついでにゲームの自主制作ってできない?

うみひこ

名古屋 美術館めぐり①

1ヶ月も前の美術館鑑賞についての報告を今するのも…といった感じなのですが、名古屋にある徳川美術館と愛知県美術館に行きました。

1つめにご紹介するのは現在徳川美術館で開催されている「茶の湯の名品」展。
大学院時代の後輩が「初めて担当した展覧会が始まった」と連絡してきてくれたので、それは見に行かないといけないよな、と思いまして(義理堅い性格ゆえに)、お邪魔してきました。

結論から言って、とっても見ごたえのある素晴らしい展示でした。
まず目に入るのが「君台観左右帳記(くんたいかんそうちょうき)」。室町時代の、お茶席等の会所の飾り方を書いたものです。これにより、室町時代の美意識がわかります。「わび」「さび」など、簡素な印象がある室町のお茶の世界ですが、結構もりだくさんに色々飾っていたんですよ。
今回、第一室はできるだけ「君台観左右帳記」の飾り方にならって展示したとのこと。なので、貴重な台(作品)の上にこれまた貴重なお茶碗をおく、なんてところも見られるのです。とっても雰囲気のある展示になっています。
展示方法もひっくるめて徳川美術館の魅力なんですね。

ブログ原稿20151104名古屋 美術館めぐり㈰ 画像1
こちらは図録。表紙のような展示が本当に見られます!

歴代の将軍が好んだお茶道具をその人ごと並べて展示する部屋もあり、私のようにお茶の世界になじみの無い人間にもとても親しみやすい展示でした。
なにより後輩が頑張っている姿にとても元気づけられました。先輩も頑張るわ…今休館中だけど。
こちら、11月8日までの展示となっています。お近くの方もそうでない方も是非!

余談ですが、後輩と会ってお話する時間があまりなくて、肝心なことを言い忘れました。
最近、「刀剣乱舞(通称とうらぶ)」という刀を擬人化したシミュレーションゲームに徳川美術館の所蔵の日本刀「鯰尾藤四郎」が出ているのですが、私はそれがうらやましくてならない。
「所蔵作品がイケメンに擬人化されてしかもそれに人気声優が声をあてるなんていーなーっ!」…先輩としてこのことを本当は伝えたかった。
…まさか刀が擬人化されてゲームになるとはな~。うらやましぃぃいーっ!きーっ!

 

名古屋美術館めぐり②愛知県美術館編に続く!!

作品の素材調査

作品の素材調査は、研究の基礎となる大切な仕事です。

現在、東京芸術大学 文化財保存学専攻のチーム(木島隆康教授、桐野文良教授、稲葉政満教授、塚田全彦准教授、半田昌規非常勤講師、大久保早希子助手)と共同で、海の見える杜美術館の、とある重要な作品群の素材分析を手掛けています。

20151105作品の素材調査

1) 各種光による撮影(可視光、赤外光、紫外線蛍光)
2) 支持体の材質調査ならびに技法の調査:高分解能光学顕微鏡
3) 彩色材料の調査:蛍光X線分析ならびに複合X線装置、可搬型FTIR

を手始めに行いました。

作品数も多く、息の長い調査になりますが、発表できる時期が来ましたら、また改めてご報告いたします。

 

うみひこ