ワークショップ「オリジナル指輪付き香水瓶を作ろう」を開催しました

早いもので、もうすぐ梅雨の時期ですね。インドア派の人間としては生活にそれほど影響はないのですが、季節の移り変わりをしみじみ感じております。遊歩道はそろそろアジサイがきれいですよ。

 

5月3日、当館では、今回の香水瓶展に関連してワークショップを行いました。 「オリジナル指輪付き香水瓶を作ろう!」というものです。 この企画、大変多くのお申し込みのお電話をいただき、企画した本人も驚きました。人数の関係で、おことわりをしなければならなかったことが本当に残念です。今度、作り方などをご説明する記事をアップいたしますので、自分でもやってみよう!という方がもしいらっしゃいましたら、そちらをご参考いただければと存じます。

 

今回の展覧会は、幅広い時代と地域における香りに関わる品々を展示しております。 個人的な意見ですが、香りとその瓶のあり方について、私が見るたびに新鮮な驚きを感じるのは、17世紀の《ポマンダー》、18、19世紀の《指輪付き香水瓶》です。両者とも、なんと身につけることのできた香りの器です。

ポマンダー(pomander)はリンゴを意味する「ポム(pomme)」と竜涎香とも呼ばれる香料の名「アンバーグリス(ambergris)」の2語がつながって生まれた言葉です。これは、香りの容器であると同時に、鎖につなげて腰から提げ、身を飾るためのアクセサリーでもありました。《指輪付き香水瓶》は、その名の通り指に指輪をはめ、舞踏会などの社交の場に持っていくことができました。当時の女性はコルセットで体を締め上げていたため、失神することが多く、気付け薬用に香りのついた酢などを持ち歩いていたのです。

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《指輪付き香水瓶》 スイス 1820年

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《指輪付き香水瓶》 スイス 1820年

 

現在、おしゃれな一部の方は香水のアトマイザーを持っておでかけされるでしょうが、それを見せるためのものとして持たれている方はあまりいないのではないでしょうか。香りという今の私たちにとって身近なものであっても、時代や場所、使っていた人の立場によってその使い方は異なりますね。過去の作品と出会う楽しさはこういうところにあるのではないかなと思いますが、いかがでしょう。

もう今、こんな香水瓶は売っていない・・・というより、19世紀にだって簡単に手に入るものではなかったのです。でも、ちょっと使ってみたい、手に入れてみたいとは思いますよね。今回展示している香水瓶、ほとんどが「実際に使われていたもの」であり、「誰かが持っていたもの」です。だから、「使ってみたい!」「ほしい!」という気持ちがわきおこるのも鑑賞していて自然なことです。

・・・というわけで、私がその気持ちに素直に従った結果、このようなワークショップ企画とあいなりました。皆さん、自分でオリジナル指輪付き香水瓶、作ったらいいんですよ!

楽しく創作していただきたいし、ちょっと作品のことも知っていただければうれしいな・・・ということで、展示室で少し私の解説―香水瓶に見られる時代ごとの好み、図像にこめられた意味―などを聞いていただいて、「だったら現在の私たちが作る最高の指輪付き香水瓶ってどんなものだろう?」というのを少し考えていただきながら作っていただきましたよ。

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このような土台に自分でデコレーションしていきます。 実際に香水が入れられます。

では参加してくださった皆さんの作品のお写真です!

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個性が出ますよね。自分だったらこういうデザイン思いつかないな、という作品がいくつもありました。 時間のご都合で帰られた方の作品は撮れませんでした・・・ごめんなさい。

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この方は18世紀の香水瓶からインスピレーションを得て作ってみたとのこと。 たしかにふんだんな植物モチーフやカメオ的なモチーフが18世紀的ですね。

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この方は「ベルサイユのバラ」をイメージしました!とのことでした。 たしかに池田先生のマリーアントワネットが着ているドレスを思い出します、私。

皆さん、ご自分が見てきたもの、好きなものの記憶を活かして素敵な作品を作ってくださいました。限られた時間と材料でのワークショップでしたが、皆さんとても生き生きと制作してくださって、大変うれしかったです。 瓶に香水を入れて、指にそっとはめてみてくださいね。

今後も皆さんと美術との関わりが少しでも豊かなものになるような企画を考えて生きたいと思います。精進していきますので、もしまたこのような機会がありましたらぜひ当館へ足をお運びいただければと思っております。 それではまた!

 

森下麻衣子