蘇州版画の光芒 国際都市に華ひらいた民衆芸術 展示室公開映像

蘇州版画の光芒展で公開している動画をユーチューブにアップしました。

どうぞご覧ください。

蘇州版画の光芒 国際都市に華ひらいた民衆芸術 2階ギャラリー公開動画 – YouTube

以下ユーチューブテキスト

― 蘇州版画の興隆 ―

明末清初(17世紀)
明から清へ、王朝交代の戦乱の中
明代のすぐれた版画の技術は継承された
絵の空間に見える幾何学模様は明代の摺りの技法の跡
細く美しい線で物語の一場面が描かれている

康煕年間(1662-1722)前期
三藩の乱などの内戦が続くなか
蘇州には呂雲台などの版元があった
五色套印と呼ばれる色とりどりの多色摺もあった
こま割りで物語を描いたものもあった
いろいろな一枚摺が出版された
このころはまだ画面に西洋画の要素は見られない

《諸国進貢図》には国々を代表するイメージが描かれている
琉球国にはサンゴ、日本国には獅子と日本刀が添えられ
「先頭を行く西洋国は母子が描かれ、聖母子像を掲げる
キリスト教のイメージと重なっている」
「康熙帝はキリスト教徒を重用し
西洋の文物を取り入れた」

康煕年間(1662-1722)後期
中国版画において、西洋の建築物や人物が描かれ
影の描写が始まり、線遠近法が用いられた
中国の風景が西洋画の技法を用いて描かれた
線遠近法を正確に使用した
中国の画工、丁允泰はキリスト教徒であった
丁允泰が描いた木々は木版でありながら
銅版画の陰影、立体感を凌駕しようとする繊細なもの
このころ、線遠近法、陰影法、ハッチングなど、
西洋の技法を積極的にとりいれた

雍正年間(1723~1735)~乾隆年間(1736~1795)初期

法大西洋筆法(西洋の筆法に学ぶ)などと記された蘇州版画がある

西洋画と中国画、銅版と木版の技法を折衷した
新しい表現が生まれた

都市図《姑蘇閶門図》《三百六十行図》
線遠近法と陰影法を交えて、都市の生活をリアルに描く

名所絵《西湖十景図》
線遠近法や陰影法を用いて、名所旧跡を正しい縮尺で描く

物語絵《全本西廂記図》
1枚の風景画の中で、異時同図法をもちいて物語一話すべてを描く

美人画《美人鸚哥図》
      油絵のような立体的な表現を目指す
      顔を塗る 版画と肉筆の融合の洗練

花鳥画
花の部分にはぼかし、空摺の技法が駆使されている
      丁亮先《花卉図》
      丁應宗《玉蘭図》

大画面の組物が作られる
だまし絵のような壁面
《母子図》

一枚摺りの版木を分割して、小画面で印刷する
《雪中送炭図》
大きく印刷したものを小さく切って販売するのではない
版木が分割されているので、小さい作品ははじめから小さく印刷する

蘇州では、このように多種多様な一枚摺が販売されていた

ここまで紹介した版画は
春信、歌麿、北斎、広重らが活躍を始める前に
中国の蘇州で流通していた版画

蘇州版画は日本にもたらされた
日本の画家が模写した作品《金殿玉楼図》《蓮池亭遊楽図》

日本の画家が蘇州版画を参考にしたと思われる作品
奥村政信《唐人館之図》
鈴木春信《風流やつし七小町・関寺》
山本若麟《西湖図》

― 蘇州版画は西洋にも輸出されていた
  蘇州版画の光芒が、近年次第に明らかになってきている ―

さち