引札―新年を寿ぐ吉祥のちらし―Part Ⅱ 開催中です

ご無沙汰しております。この間、学生時代の後輩に会った際、「最近あまりブログを書いていないのではないか?」と指摘されました。反省しきりです。

11月3日より、展覧会「引札―新年を寿ぐ吉祥のちらし―PartⅡ」が開催中です。当館の引札は昨年の展覧会でもご紹介したのですが、まだまだご紹介しきれなかった作品もあり、今年も開催となりました。

引札は、明治から大正にかけて隆盛した、広告のための印刷物で、商店が年末年始にお得意様に配布したものを、特に「正月用引札」と言っています。年末年始にふさわしく、おめでたいモチーフが画面に描かれています。当時の幸せを呼び込むと考えられたもの、あるいは人々の幸せのありかたがそこにあると言えるでしょう。

前回同様、今回も「かわいい」「おもしろい」という声を来館の皆様からいただいておりますが、意外な作品が好評で、担当としても驚いております。

田口 年信《大黒 家族 お金 床の間》1899年(明治32)頃

掛け軸に描かれた大黒が持つ打出の小槌から、お金がどんどん湧いてきています。真ん中の男性はそれを三方で受け、右側のお嬢さんはこぼれたお金をかき集めています。

ここに表されているのは、「お金があったらいいな~」という素直な気持ちではないでしょうか。

美術館では多くの場合、画家の誰かが作った立派な芸術を鑑賞して、なにを表現しているのかを読み取る、というなかなか大変な作業をしてしまいがちですが(それは私に限ったことではないでしょう)これら引札を見てまず受け取るのは、「長寿!富!商売繁盛!家庭円満最高!」という、非常に簡単なメッセ―ジです。

こうした絵画は共感できる部分も多いですし、この率直さがいっそ気持ちよいということで、美術に親しんだ人にとっても新鮮に思えて好評なのかもしれませんね。

《七福神 飛行機 気球 富士》明治時代末~大正時代初期

宝船に乗ってやってくる姿が定番の七福神も、引札の世界ではお札の羽の飛行機でやってきます。率直に、神様が富(それも紙幣というかたちで)をもたらしてくれることを願っている絵です。

ちなみに今回、すべての作品に解説がついているわけではありませんが、作品の情報を書いたキャプションにちょっとした一言を添えています。何かを解説していると思いきや、私の感想がほとんどです。ぜひ見てみてくださいね。

《瓶酒 グラス 恵比寿 大黒》1907年(明治40)頃

全部こんなギラギラした欲望を描いた絵画なの、疲れるわと思われるかもしれませんが、こんなチルい絵画も展示しております。こちらはスタッフに好評の作品です。恵比寿さんたちがお酒を手にしながら談笑しています。こんな時間を明治の人たちも持っていたんでしょうか。

展覧会は12月25日までです。引札の世界をぜひのぞいていただければ幸いです。

森下麻衣子