引札 新年を寿ぐ吉祥のちらし 4(引札の豆知識ほか)

展 覧 会 名 : 引札 新年を寿ぐ吉祥のちらし
会   期 : 2021年11月27日(土)~12月26日(日)
会   場 : 海の見える杜美術館

「引札 新年を寿ぐ吉祥のちらし 3」から続く

第3展示室に現存企業一覧のパネルを掲示しました。
現存企業一覧

展示室の各所では、展示品近くに「引札の豆知識」の拡大パネルを掲示して観覧の補助としました。

引札の豆知識 (1)

引札の豆知識 (1)

引札の豆知識 ①
引札に記された文字は、絵師の名前、絵の印刷所の名前、暦の印刷所の名前などです。

引札の豆知識 (2)

引札の豆知識 (2)

引札の豆知識 ②
引札は絵と共に店名等を記載して配布するものです。本展覧会に多く見られる店名のないものは、見本として制作されたものです。(この二枚は同じ年の物ではないので暦の年が異なっています)

引札の豆知識 (3)

引札の豆知識 (3)

引札の豆知識 ③
明治十六年の引札までは、略暦(カレンダー)に政府の発行許可済みを示す頒暦証と、暦を発行する頒暦商社の印があります。

引札の豆知識 (4)

引札の豆知識 (4)

引札の豆知識 ④
技法のところに記されている「凸版(木版製版 多色摺)」は、江戸時代の浮世絵と同じ印刷技法のことです。この技法で作られた引札には浮世絵と同じような味わいがあります。

引札の豆知識 (5)

引札の豆知識 (5)

引札の豆知識 ⑤
あまり多くは見られませんが、銅版を用いて製版された引札があります。
銅版は、銅の板に傷をつけて線を引くことで、木版よりも細かな線を表現することが可能です。

引札の豆知識 (6)

引札の豆知識 (6)

引札の豆知識 ⑥
地紋フィルムというスクリントーンのようなものを使って、肉眼では見えないような小さな点を印刷した引札があります。この引札では背景の黄色の点のところです。

引札の豆知識 (7)

引札の豆知識 (7)

引札の豆知識 ⑦
硬質の木を輪切りにして木口を版木として使用する木口木版という技法を用いた引札があります。銅版のような精密な絵柄をつくります。版木が小口のサイズに限られるため、このように引札の一部分に使われます。

引札の豆知識 (8)

引札の豆知識 (8)

引札の豆知識 ⑧
明治時代後期になると、色の点を掛け合わせて様々な色を表現する、クロモ石版という技法で柔らかな色彩を繊細に描いた引札がでてきました。

引札の豆知識 (9)

引札の豆知識 (9)

引札の豆知識 ⑨
空摺(からずり)とは、手作業で紙に凹凸をつける技法です。江戸時代の浮世絵に使われていて、数多くの明治の引札にも用いられました。

引札の豆知識 (10)

引札の豆知識 (10)

引札の豆知識 ⑩
空押(からおし)とは、機械で紙に凹凸をつける技法です。手摺から機械印刷にかわっても、凹凸をつけた表現にこだわった引札が多数あります。

引札の豆知識 (11)

引札の豆知識 (11)

引札の豆知識 ⑪
明治時代の引札制作には多くの絵師がかかわりましたが、はじめに牽引したのは浮世絵師でした。

引札の豆知識 (12)

引札の豆知識 (12)

引札の豆知識 ⑫
日本画家としても活躍した絵師がいます。北野恒富(3-08)は妖艶な女性像を描く作家として知られますが、ポスター等の広告物や新聞の挿絵なども手がけるなどグラフィックデザイナーとしての面もあり、引札も手掛けたものと思われます。

引札の豆知識 (13)

引札の豆知識 (13)

引札の豆知識 ⑬
引札を描いた絵師の中には、現在ではほとんど知られず、生没年や経歴が不詳の人が大勢います。引札を専門に活躍していた人の中に多いようです。三島文顕もその一人です。

引札の豆知識 (14)

引札の豆知識 (14)

引札の豆知識 ⑭
有名な話をパロディーにした引札があります。

引札の豆知識 (15)

引札の豆知識 (15)

引札の豆知識 ⑮
人々が憧れる最新の機器が描かれます。
この引札には使っている様子が詳しく描かれています。

引札の豆知識 (16)

引札の豆知識 (16)

引札の豆知識 ⑯
品物の製造工程を一通り描いた引札が数多くあります。店の扱う商品は、正当に作られたものであることをアピールする意味もあったことでしょう。
この引札は茶摘みから袋詰めまで、茶の製造工程が詳しく描かれています。

引札の豆知識 (17)

引札の豆知識 (17)

引札の豆知識 ⑰
商売の風景の中にも、大小暦が隠されていることがあります。大小暦とは、各月の日数が三十日を大の月、二十九日を小の月と呼んだものです。簡単なカレンダーとして使われていました。

引札の豆知識 (18)

引札の豆知識 (18)

引札の豆知識 ⑱
洗濯屋などの新しく生まれた仕事も引札に描かれました。
どのようなサービスなのか、引札を使ってその内容を積極的に宣伝したのでしょう。

引札の豆知識 (19)

引札の豆知識 (19)

引札の豆知識 ⑲
恵比寿、大黒などの福の神は引札界のスターとも言え、多くの引札に様々な姿で描かれています。この引札では、一見、福の神とは気が付きにくいのですが、左上に狩衣に折烏帽子姿のふくよかな人物の恵比寿を発見すると、中央の大きな人物は、二人そろって商売繁盛の神として描かれるもう片方の大黒とみて間違いありません。シルクハットのモーニング姿は広告屋の口上役の衣装ですから、店頭で呼び込みの仕事をしていることがわかります。

引札の豆知識 (20)

引札の豆知識 (20)

引札の豆知識 ⑳
人が七福神になりきったり、コスプレしたりしている絵があります。

引札の豆知識 (21)

引札の豆知識 (21)

引札の豆知識 ㉑
ありえない設定の、インパクトある絵が描かれています。引札は、人をひきつけ興味を持ってもらうことも大切な役目のひとつです。

 

展覧会は以上です。

この度の出品作品はすべて海の見える杜美術館所蔵品です。

展覧会開催に合わせて発刊しました『資料集 引札』には館蔵品の中から1756点の引札をカラーで掲載しています。興味をお持ちの方はぜひご覧ください。

資料集 引札 海の見える杜美術館 2021

資料集 引札 海の見える杜美術館 2021

引札 新年を寿ぐ吉祥のちらし 5(資料集)

青木隆幸