第2回海の見える杜美術館
彫刻ビエンナーレ
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優秀賞の除幕式
彫刻ビエンナーレ審査結果のお知らせ
このたびの彫刻ビエンナーレでは、多数のご応募を頂きました。皆さま、誠にありがとうございました。
応募総数 81件の作品の中から 厳正な審査の結果、優秀賞及び奨励賞を以下の作品に決定いたしましたのでここに発表いたします。
受賞作品
大賞: 該当作品なし
優秀賞: 作品名 森の精霊と番犬
  作者 田中伸季
  制作意図 森の中で景色に反発するでなく違和感無く、森が生まれた時からこの場所に存在し、今迄もそしてこれからも森を見守っていた様なこの森の精霊と森を見張る番犬を作りました。この作品から様々な物語が始まればと思います。
  サイズ タテ 88cm ヨコ74cm 高さ245cm
  重量 約2500kg(※サイズ、重量共に台座を含む)
  材質 ブロンズ、花崗岩(台座)
※写真は試作品です。
優秀賞: 作品名 水の大地
  作者 児玉士洋
  制作意図 自然の恵みとやすらぎを自然の文明の融合という形で表現した。
  サイズ タテ 168cm ヨコ144cm 高さ280cm
  重量 約340kg
  材質 ステンレス・スチール( sus304) 板材の溶接による箱物
※写真は試作品です。
※優秀賞2作品は、2008年に実作品となって杜の遊歩道へお目見えする予定です。
奨励賞: 作品名 杜遊人(もりゆうじん)
  作者 小林賢二
  制作意図 小さな生き物たちや、木々や草花を慈しみ守ってくれる 優しい杜の番人。遊歩道を行き交う人々の移動とともにその表情を変える、ヒューマニックなシルエットと軽やかなリズムが、訪れる人々に親しみやすさをもって受け入れられれば幸いです。
  材質 黒御影石
※写真は試作品です。
審査経過について
海の見える杜美術館彫刻ビエンナーレ事務局長 田中修二
 審査経過について書くという役割からは少しはずれるかもしれませんが、次のような問いから始めたいと思います。
 私たちは難しすぎる課題を、彫刻家の方たちに出しているのでしょうか?
 結論から言えば、今回も大賞を選ぶことができませんでした。それは結局、審査員の心をつかんで離さないような、どうしてもこれを遊歩道においてみたいと思わせるような作品が見つからなかったということでした。それはもちろんすべての審査員の心をつかむということではありません。たった1人の心をつかむこともできなかったと言ったほうがよいように思います。
 「遊歩道に相応しい」作品という条件が難しいのでしょうか。「新人彫刻家の発掘」という主旨自体が作品のレベルを落としているのでしょうか。ただしここでは個々の彫刻家としての能力のレベルをいっているつもりはありません。むしろ問題はその姿勢であるのではないかと思います。
 それも、今回出品してくださった彫刻家のみなさんのことだけではなく、日本の彫刻界全体にもいえることなのではないかと考えます。このことはもう一度、この文章の最後に触れることにします。まずは審査の具体的な経過から書いていきましょう。
 審査委員会の日は天気のよい秋の一日でした。はじめに第1回のとき同様、審査員のみなさんで作品の展示場所となる「杜の遊歩道」を、入口から美術館のほうへ歩いて上ってみました。前回、昨年の3月に行なった審査委員会のときには、春もまだ早く少しさびしかった花や緑も、その後ボランティアの方々による整備がさらに進んだこともあって、今回はだいぶ彩りの豊かな空間になっていました。
入口からバラ園を通って少し上ったところに芝生が敷き詰められた開けた空間があって、そこに前回の優秀作品、吉田利雄さんの《「間」〜MA》が立っています。完成作を見るのは審査員の方のほとんどが初めてで、その展示状況を改めて確認しました。
 その後さらに、水をたたえた池、木々や草花の生い茂る小径や水車小屋、登り窯、大きな岩を流れ落ちる滝などが点在する遊歩道を歩いたあと、一同で美術館に移動し、館内の応接室で審査委員会が始まりました。模型作品はすでに9月から館内の廊下に並べて展示してあり、一般の来観者による投票もすでに終わっています。

審査委員会では、はじめに事務局から各審査員がそれぞれ3作品を選び、それに順位をつけて上位から3点、2点、1点と得点をつけることで最初の絞り込みを行なう方法が提案され、諒解されました。それにしたがい、約30分の時間をとって作品の審査が始まりました。
 その結果、得点を獲得した作品は16作品、そのうち合計2点以下のものを除いた次の7作品から受賞作を選んでいくことになりました。田中伸季《森の精霊と番犬》、朝野浩行《時の芽》、児玉士洋《水の大地》、小林賢二《杜遊人》、明田一久《潮風に向かって》、中岡慎太郎《MATAGI》、菱田波《繋り》です。それをふまえて討議が始まり、それぞれの作品に関していくつかの意見が出されました。たとえば《潮風に向かって》はすでにおかれている田中毅さんと林宏さんの石の彫刻と雰囲気が似通ってしまうのではないか、《森の精霊と番犬》は実制作を行なう際に犬の顔を拡大したときが心配、またその作品の印象が遊歩道の雰囲気に合うかどうかといった発言がありました。
 次にさらなる絞り込みを行なうために、各審査員がそれぞれ2作品を選び、上位から2点、1点と得点をつけることとしました。その結果、《森の精霊と番犬》と《水の大地》が1位、2位となり、また同点3位の3作品から「新人彫刻家の発掘、援助をおこなう」というビエンナーレの主旨をふまえて、30代の作家の作品である《潮風に向かって》を取り上げ、これら計3作品を受賞候補作品として選びました。
  しかしここから、受賞作品を決める話し合いは難航しました。そのため事務局からの提案で、最初の投票で1〜2点を獲得した作品のうち30代以下の、大島由起子、梶野敬介、谷川陽彦、上山明子、金未麗各氏の作品を改めて並べてみました。審査員からはそれぞれの作品について評価する意見もありましたが、いずれも決め手に欠くということで、再び上記3作品から選ぶこととしました。
 その後、まず奨励賞を決めることとなり、一般の来館者による投票数が最も多かった小林賢二氏の《杜遊人》を奨励賞の作品とすることで全員が承諾しました。この点については、来館者のみなさんが一見人目をひく作品だけでなく全体の中からとてもしっかりと選んでいらっしゃることに対して、審査員のみなさんも感心していました。山梨氏からは、この作品を大賞・優秀賞の候補に加えてもよいのではないかと意見が出されました。作品はそれがおかれる場所の自然と合うことが大切であり、その点で石の表面に遊歩道の木々が葉を茂らせたイメージを刻み込もうという作家の意図は興味深いというものでした。
 これに対して、田中氏はそれが「工芸的」であること、山本氏からも「石を石として扱うことを大切にしてあげたい」といった意見があり、一方で藤嶋氏からは屋外の彫刻として、このようなものもあってもいいのではないかという意見がありました。
 こうした討議をふまえて、今回も大賞該当作品はなしということで審査員全員が一致し、《森の精霊と番犬》《水の大地》《潮風に向かって》《杜遊人》の中から、挙手により優秀賞を決定することとなりました。その結果、それぞれ3名が《森の精霊と番犬》と《水の大地》を、1名が《杜遊人》を推し、《森の精霊と番犬》と《水の大地》の2作品を優秀賞に決定しました。ただし《水の大地》はステンレス・スチール製の光沢のある表面であることから太陽の光であまりギラギラしない場所に、《森の精霊と番犬》は木々が茂った森の中におくべきであろうとの提案がなされました。
 以上のような選考によって、来年、遊歩道には多様な作品がおかれることになります。これまでの石と土でできた作品群に加えて、ステンレスとブロンズという素材が加わり、展示場所も開けたところだけではなく、杜の茂みのほうまで広がることになりそうです。その点では私たち彫刻を見る側にとっても、新たな楽しみを期待させる、満足のいく結果だったのではないかと思います。
 けれど私たちが最も望んでいるのは大賞に選ぶべき作品を見出すことであり、それは今回も果たされませんでした。それがなぜなのか、冒頭で少し触れましたがここでもう一度考えてみたいと思います。
 審査委員会の中でとても印象的だったのが、上でも紹介した《杜遊人》をめぐる審査員のみなさんの意見でした。それはいうなれば「彫刻表現とはなにか」をめぐる各人の思索がぶつかり合う瞬間でした。それはここに名前をあげなかった審査員の方々からも、その選考の過程の中でひしひしと伝わってくるものでした。
 彫刻とはなにか、彫刻で表現するとはいかなることであるのか、彫刻とそれが展示される場所との関係はいかなるものなのか、そういった問題意識をみなさんがそれぞれにもちながら、審査は行なわれました。ひるがえって前回および今回の出品作品を眺めたとき、さらには(あえていえば)日本の彫刻界全体を考えたとき、今日の彫刻家の側にはそうした意識があまりにも希薄なのではないかと思わざるをえないのです。一体なぜ、なんのために、なにを、彫刻で表現しようとするのでしょうか。
 おそらく今回出品された模型作品のいくつかは、ほとんどなにも手を加えることなくまた別の彫刻コンクールへと出品されるのではないかと思います。もちろん私たちにはそれを止める権利はありませんし、もしかしたらそこで受賞するということも十分にありえるでしょう。しかしそれが彫刻を表現する者の姿勢として、全く問題ないものであるのかどうかは深く問われるべきであると私は考えます。
 山梨氏からはまた「最近の若い人は自分の世界は作るが、外には開かない」という意見が出され、ほかの方からも同感の声があがりました。それはある意味で彫刻という表現において致命的ともなりうることではないでしょうか。
 もしかしたら「遊歩道に相応しい」ものという私たちのお願いは抽象的に過ぎるかもしれません。しかしたとえば建築家ならば、クライアントの希望をふまえ、それを最大限に汲み取り、それに沿ったデザインを構想し、提案を行うのは当然のことでしょう。そして本来的に彫刻家とは、自らの作品がおかれつづけることになる場所の、起伏や色彩、そこに流れる風や匂いを感じとって、そこから「かたち」を生み出す表現者なのではないでしょうか。そうした感受性を持つものこそが芸術家たりうるのではないでしょうか。
 彫刻を屋外におくということは、決して特別なことではなく、芸術作品にとってつねにそれが展示されるべき場所があるのは当たり前のことです。美術館の展示室のような白い壁に囲まれた空間(それも本当はきわめて特殊な場所なのですが)に、周囲の空間と無関係に存在することが美術作品の本当の姿だという考え方があるとすれば、それはあまりに狭い考え方です。むしろ私たちが生きていく場所ということを考えるならば、屋外とは人間にとって最も身近な場所でもあるはずです。
 とはいえ、実のところ自然と彫刻とが本当に結び合えるものなのか、つながりうるのかは、長い彫刻の歴史を考えてみても、いまだに答は見つかっていないことなのかもしれません。しかしだからこそ、彫刻家たちは答を探して表現しつづけなければならないのだと思います。私たちはこのビエンナーレがその答を見つけるための、一つのささやかな実験の場になればよいと願っています。と同時に、その答を探し求める意欲をもった若い彫刻家の出現を待望しているのです。
( 大分大学准教授・たなか しゅうじ )
審査委員会
期日: 2007年10月13日(土)
審査員:
<審査委員>
彫刻家
峯田 敏郎     
<審査委員>
東京芸術大学教授
山本 正道
<審査委員>
美術評論家
藤嶋 俊會
<審査委員>
日本大学芸術学部教授
高橋 幸次
<審査委員>
東京文化財研究所文化財
アーカイブズ研究室長
山梨 絵美子
<審査委員>
当館顧問
田中 日佐夫
<審査委員>
当館館長
梅本 道生
※敬称略
以上の7名で構成いたします。
応募総数: 81点
審査方法:

・ 1次審査:各審査員が応募作品の中から、各々3作品選出。
・ 2次審査:1次審査選出作品の中から、各々2作品選出。
・最終審査:協議の上、各賞を決定。

本コンクールの開催にあたりましては、関係各位より多大なるご支援ご協力をいただきました。あらためて心より感謝申し上げます。
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