海の見える杜美術館は、耐震工事のための約3年間の休館を経て、2018年3月17日にリニューアルオープンすることになりました。リニューアル後初の展覧会として「香水瓶の至宝~祈りとメッセージ~」展を開催いたします。

 本展覧会は、香りが信仰と結びついていたことを示す古代エジプトの器から、現代の高級香水瓶に至るまで、香水瓶の至宝ともいえる名品を時代とともに辿り、そこに込められたメッセージを読み解いていこうとするものです。古代祭祀のための香油瓶、病魔から身を守るために使用された中世のポマンダー、ヨーロッパ宮廷文化が生んだ、マイセンをはじめとする各国の磁器製の香水瓶、はたまた舞踏会用の指輪つき香水瓶、さらには近年まで王室に伝承されていた宝飾細工の香水瓶、そして広く世界中の人々に愛された有名ブランドの名香の容器等、当館の香水瓶コレクションから厳選された名品が一堂に会する展覧会です。

 いつの世にも人々の生活の中で大切にされてきた香水瓶は、その時代ごとの思想や社会、そして個人の美意識を映し出しています。時代と地域を越えて慈しまれてきた小さな器にまなざしを向けることで、香りの文化が、豊かな風土や文化交流、そして人々の美を希求する心から生まれてきたことを感じていただけることでしょう。

期  間:20183月17(土 〜 7月8(日)

開館時間:10:0017:00(入館は16:30まで)

日:月曜(ただし4月30〈月・祝は開館)

料:一般 1,000円、高校生・大学生 500円、中学生以下無料

     *障がい者手帳などをお持ちの方は半額。介添えの方は1名無料。

     *20名以上の団体は各200円引き

     *入館割引は一種類のみです。対象者は証明できるものをご提示ください。

会  場:海の見える杜美術館(広島県廿日市市大野亀ヶ岡701)

後  援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、エジプト大使館 文化・教育・科学局、広島県教育委員会、廿日市市教育委員会

 

展示概要

 

  『宗教から生活へ』-地中海沿岸世界(BC30c~AD7c)

古代エジプトにおいて、香りは信仰と強く結びついていました。まず日々の儀式の中で、香りを神に捧げることは重要なことでした。そしてひとたび死を迎えると、死後の世界を生きるために、特別な聖油が用意されました。時代が下り、香りは生活の場においても使用されるようになりましたが、香料は常に希少なものであったために、それを収める器も第一級の技術によって製造されました。

1.

《奉献用容器》

エジプト

古王国時代

《7つの聖油パレット》

エジプト

古王国時代

《アリュバロス》

ビザンティン帝国

5世紀または6世紀

 

    『自己顕示の象徴としての香水瓶』 - 17世紀ヨーロッパ社会

十字軍の遠征によって、香料はヨーロッパにももたらされました。15世紀から17世紀にかけて、ヨーロッパを襲った恐ろしい疫病を避けるために香料が使用されたことが、ポマンダーからうかがえます。その一方で、次第に貴族たちの間では、独自の香りを調合することが優雅さの証明であると考えられるようになります。香水瓶にもそれに見合う凝ったデザインの容器が求められ、ガラス職人や金銀細工師などが技を競って、その要望に応えました。

2.

《ポマンダー》

ドイツ

1630年頃

《香水瓶》

イタリア、ヴェネツィア

1690年頃

《香水瓶》

ベルナール・ペロ(1640〜1709)

フランス、オルレアン

1680〜1709年 

 

    『美の追求と様式化』 - 18世紀貴族社会

18世紀、貴族文化が成熟したヨーロッパでは、香水がその華やかさの一端を担いました。

貴族たちは化粧の際、その仕上げに必ず香水を身に振りまきました。愛を表すモチーフや植物の形をしたものなど、趣向を凝らした様々な形の香水瓶が、磁器やガラス、金属等で作られました。それらからは、当時の貴族たちの高い美意識を垣間見ることができるでしょう。

3.

《ネセセール》

イギリス

1760〜1765年頃

《香水瓶》

フランス

1740年頃

《セント・ボトル》

イギリス

1755年頃

 

    『宝飾美術への昇華』 - 19世紀憧れの社会

市民革命、産業革命を経て、社会は大きく変貌しました。香水分野も技術革新により近代化され、人工香料を用いた香水が登場し一気に発達します。

また今日「マスターピース」と呼ばれるような宝飾細工の香水瓶も多数作られました。なかでも、ロシア皇室御用達の宝飾商ファベルジェの水晶の香水瓶は、まさに至宝ともいえる逸品でしょう。

4.

《香水セット》

フランス

1870年頃

《香水瓶》

フランス

1820年頃

ファベルジェ

《香水瓶》

ロシア、サンクトペテルブルク

1895〜1900年頃

 

   『香水産業の成熟と製品化された香りの芸術』 - 第二次世界大戦前

18世紀に誕生した香水製造業者が19世紀を通じて香水産業を発展させましたが、19世紀後半よりガラス製造業者やデザイナーが香水瓶製作に積極的に携わることで、より洗練された香水瓶が生み出されます。バカラ社やルネ・ラリック等の存在がその代表的な例といえるでしょう。やがてポール・ポワレやスキャパレリといったファッション・デザイナーも参入し、香水瓶の持つ芸術性やメッセージ性が一層高まりました。今日まで長く愛され続けている名香が、次々と登場したのもこの頃です。

5.

L.T.ピヴェール社

香水瓶《アズレア》

デザイン:1901年

ゲラン社

香水瓶《光線》

デザイン:レイモン・ゲラン、1932年

スキャパレリ社

香水瓶《ショッキング》

デザイン:レオノール・フィニおよびピエール・カマン、1937年

 

   『マスターピースとメッセージ  ~想いと願い~ 』 - 第二次世界大戦後

大きな戦争を経て、時代は女性らしさを取り戻したいと願うようになりました。香水瓶もその例に漏れず、優美かつ華やかなものが製造され、世界中に広まりました。また伝来の技術を駆使して製造された、高級香水瓶入りの限定版も作られました。

6.

クリスチャン・ディオール社

香水瓶《18世紀の花器》

デザイン:クリスティアン・シャルル、1956年

クリスチャン・ディオール社

香水瓶《ジャドール》

デザイン:エルヴェ・ヴァン・デル・スタエテン、1999年

エルメス社

《天皇陛下御即位記念香水瓶》

デザイン:サンルイ社、1930年頃

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